初恋気づいて~その後~
「あれ、話に夢中になってたらいつの間にか晴れてたね」
コーヒーショップの窓際から外を見つめる朱雨さんの嬉しそうな顔につられて横目で外を見る。確かに夕方の雨は去り、嘘のように晴れていた。まるで、自覚してしまった自分の心みたいだ。
「ありがとうございました、色々と」
「え、あはは、どういたしましてぇ」
あたしのちょっと含みを持たせた言い方に、お兄ちゃんとの馴れ初めを指されていると感じて照れを隠しているようだけど、あたしのホントの「ありがとう」は、貴女への恋感情をハッキリと気づかせてくれたって事。まいったなぁ、あたし恋愛になんて興味無かったのに、まさか初恋がお兄ちゃんのカノジョになるなんてさ。ビックリだよ。
「あの、
「えっ、うんいいよ。なんならお義姉ちゃんて呼んでくれても」
「それは、ちょっと、あたしは、朱雨さんがいい」
心の中ではとっくに朱雨さんて呼んでたけど、本人からの了承を貰えた事が嬉しい。お義姉ちゃんて呼ぶのはちょっとやだなって思うのはあたしなりの悪あがきだろうか。
「兄ともども、これからよろしくお願いします」
「それって、春士くんとわたしの仲は夏広ちゃん公認て事になるのかな? 」
「まぁ、好きに受け取ってください」
この二人の間には入れないって心のどこかでわかってはいるけど、やっぱりあたしの心のどっかには諦めきれない初恋の炎が燻っているのかもしれない。
「あ、お兄ちゃんからSNSでメッセ着てる。今どこだって」
「あちゃ、長く引き止めすぎちゃったかな。ちょっと貸して、わたしから春士くんに説明するから」
言われてスマホを渡そうとするが、不意にちょっと思いついて朱雨さんに提案してみる。
「これ、二人で写真撮って画像見せたほうが分かりやすくありませんか?」
「あ、そうだね。仲良くなったよってアピールしちゃおッ」
朱雨さんは賛成と片手を可愛くあげてから、あたしの隣に座って肩を近づけてくる。あたしも寄り添いながら横目で彼女の綺麗と可愛いが混じりあった魅力な笑顔を見つめる。
あぁ、やっぱり好きだな。あの時、部屋の前でバッタリ会った瞬間から、好きになったのかも知れない。胸の奥がずっと熱くって、頭から貴女の顔が離れなくなったのはきっとそう、一目惚れてやつ。そして今日、貴女の見た目だけじゃない中身の魅力に触れてグッと心は
「はい、撮りますよッ。目線をキメッ」
お兄ちゃんごめんね。あたし、しばらく恋のライバルになるから。
あたしは朱雨さんの朱色に染まった頬に触れ合うように近づけた二人の仲良し画像をお兄ちゃんに恋の宣戦布告と「いま、朱雨さんと仲良し、イイでしょ?」のメッセを添えて送った。
意味なんて今はまるで分からないだろうけど、慌ててよね、お兄ちゃん。あたし、最大のライバルだよ。
「朱雨さん」
「ん? わ、オッ?!」
あたしは今の気持ちをもう一度確かめるために彼女の柔らかな頬にキスをした。冗談にしか思えない短いキスだ。
「イタズラ」
「うぁ、やられちゃったなぁ」
あたしはすました顔で舌を小さく出すと朱雨さんは朱色に少し染まった頬を撫でながら、どこまで優しく恋心を刺激する笑顔を魅せてくれた。
雨に誘われて もりくぼの小隊 @rasu-toru
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