巨大樹にて‐2

 周りの建物が減り始め、近くの地面をえぐる根が太くなってきたとき、ドローンの残骸が増えてきた。

 

 「この残骸全部、あの警備ロボにやられたのか」


 ドローンはもちろん全て旧型。結花が飛ばしたものは存在しない。結花のドローンのステルス機能により警備ロボットに見つからなかったからだ。

 しかし、旧型の、さらには運搬用のドローンにとっては、警備ロボットの攻撃から逃げろというほうが無茶だ。

 結花はそれらを横目に、巨大樹へと近づいていた。今は動かない鉄塊たちのようにならないように、気を付けなければならないと思いながら。

 

 「さあ、はじめの関門だ」


 結花の一キロほど先には固定砲台型の警備ロボットがあった。いや、あれはもう『警備』ロボットではない。そう思えるほどの、異常なほどの殺意。ここに来るまでにも数回のエネルギー砲撃を受けた。


 「まあ、当たってないんだけどね。近づくと避けにくくなるだろうから、気を付けないと」


 そんなことをつぶやく結花へ、警備ロボットは容赦なく砲撃する。光の爆撃が数発、結花の方向へと飛んでくる。飛んでくるエネルギー弾をヘルメットのレーダーで補足した結花は、横方向に飛び出した。その後、もともと結花がいた場所で小さな爆発が起こった。小さな土の欠片が散弾のように飛んでくる。結花の身を潜めていた小さな木に当たり、大きな音を立てると、またしても静寂が襲ってきた。

 

 「チッ、危ないなぁ。当たったらどうしてくれるんだよ」


 結花のスーツは大きな衝撃も防ぐことができるものの、さすがにあの土の散弾や光の砲撃が直撃すると無事ではすまない。最悪の場合は死につながる。

 だが、結花は母星で訓練を積んできたのだ。スーツがないと満足に移動もできないが、スーツがあれば話は別だ。今の結花は人間の身体能力を軽く超えている。

 

 「よーい、ドン!!」

 

 結花は掛け声とともに地面をけった。地面はへこみ、爆音とともに弾丸の如く警備ロボットへと近づいた。

 警備ロボットも無反応なわけではない。しかし、結花にとっては、この程度の攻撃はスローモーションに見える。光の玉が当たる場所はすでに結花が駆け抜けた場所のみだ。

 一キロほどもあった警備ロボットとの距離を結花は三十秒ほどで十数メートルまで近づけた。


 「これで、『ゲームセット』だよ。じゃあね」


 結花はそういうと、警備ロボットに触れた。警備ロボットは、長年雨風に打たれていたのだろう。凸凹とした表面が錆びついていた。

 警備ロボットに結花が触れると、手袋から、細い、イソギンチャクの触手のような数本のロボットアームが出てきた。ゆらゆらと動くロボットアームは、警備ロボットの装甲に、先についているレーザーで小さな穴を開けた。ポッカリと空いたその穴に、触手たちは次々と侵入して行く。侵入してから少しした後、警備ロボットは大きな音を立てて、動きを止めた。


 「はぁ。まずは、一台。まあ、ここから先はあんまりいないんだけど」


 実際、この先にロボットはほとんどいない。そのために、わざわざ結花は、ロボットのいない場所を選んだのだ。それでも、多少のロボットは許容するしかないが、何度も戦いたくはない。

 溜め息をついて、足を踏み出した地面には、機械片がいくつも転がっている。結花に踏み潰された小さな部品が、ジャラリと音を立てた。

 

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フューチャー・プラネット 海湖水 @1161222

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