巨大樹にて‐1

 前回ドローンで巨大樹近くを探索してから1か月が過ぎた。

 巨大樹近くの探索で見つかったものは主に2つ。

 一つ目は巨大樹近くの地形について。予想通り、巨大樹の根によって周辺は崩壊していた。そのため、今ある移動用ロボットが着陸できる場所がない。そのため、巨大樹近くには徒歩で行くしかない。一部の建造物は残っていたり、根が覆っているだけで根の下に破壊されていない建造物があったり、と何もないわけではなかった。

 二つ目は生態系について。結論から言うと、鳥以外に生存している生物はいなかった。そして、その理由であろうものも見つかった。


 「旧型の警備ロボットか…。でも、この星のやつは異常だな…。」


 警備ロボット。主に、無人の店や銀行、重要施設などに配置されている侵入者迎撃用のロボットである。通常のものは麻酔銃やスタンガンなどを装備していることが多い。

 だが、この星の警備ロボットはそんなものを装備していなかった。装備しているのは、対人用の光線銃。特に殺傷力が高いものだった。


 「戦争でもしてたのかな、この都市。これじゃあ調査ができないし、どうしようか。」


 戦争でもしていたのか。そんな結花の感想も正しいといえるほど、この警備ロボットの危険性は高かった。

 まず、人間がもともと住んでいた星に来るという予定はなかったのだ。「人間が住んでいない星」という条件で星を見つけ、この星に来たのだから。しかも、もし人間が住んでいた星だとしても、人間が残した文明は残っていないものという想定だった。

 そのため、結花の所持している武器は、麻酔銃などがほとんどである。対ロボット用の武器なんて持ってきていない。


 「さて、どうするかな…。」


 しかし、もうどうするかは決まっているようなものだった。あの警備用ロボットは倒せないのだ。ならば、できるだけいるところを避け、もし見つかってしまったら、全速力で逃げる。幸い、機動力はスーツのおかげでこちらのほうが高い。

 そして、根に隠れている建物の中にはいってからは、ある武器を使うことで切り抜けるしかない。


 「頼むよ。お前しか効きそうな武器がないんだ。」


 結花が取り出したのは、一つのグローブだった。

 AIが内蔵されている、ハッキング用のグローブ。母星では、犯罪者がハッキングに使用していた他に、政府が精密な機械の修理などにも使用していた。

 ハッキングは他にも機材が必要なのでできないが、旧型の警備ロボットの機能を停止させるくらい簡単だろう。

 しかし、機能を停止させるためには近づかなければならない。近づいているときに攻撃されたら話にならない。


 「まあ、何とかなるでしょ。」


 結花はスーツとヘルメットをつけ、手の部分にスーツの上からグローブをつけた。


 「さあさあ、出陣だ。」


 荷物を持つと、結花は外へと歩き出した。

 

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