[急変]
「明日香ちゃん、大丈夫?!」
「 ほら、座って」
「いっ、痛いーっ」
目の前でふいに右腕の痛みを訴え始めた木山明日香の歪んだ表情を見ながら、私は為す
「そ、そんなに痛いの?!」
「急にどうしちゃったのよ!」
想定外の事態に恭子も華子も動揺を隠せず声を掛けている。
「わ、わかんない、けど痛い痛い痛いーっ」
「あ、明日香ちゃんっ」
「わっ」
いったん座らされたソファーから明日香の身体が跳ねるよう床に転がり落ちた。
すると次の瞬間、左手で強く握った長袖シャツの二の腕の辺りに血が滲み始めた。
「明日香ちゃん!」
「て、手を離しなさいっ、ほらっ」
恭子と華子がのたうち回る明日香の身体に抱きつき、左手を離させようとした。
が、「ぎゃーーっ」と叫びを上げながら転がる明日香の動きを大人2人がかりがまったく押さえ込めない。
(な、何・・・・)
床で団子状態でもつれ込む3人を前に私は金縛りにでもなったかのように身じろぎもせず座ったままでいた。
見れば明日香の腕の出血はかなりの量になりベージュのカーペットのあちこちを染め始めている。
(ど、どうしよう・・・・あ)
茫然自失から一瞬、
「あ、あのっ、き、救急車、呼びましょうか!」
何とか声を絞り出せた。
「おっ、お願いっ、電話してっ! 住所は私が言うからっ」
全身で悪戦苦闘をする佐久田華子がうわずった声で叫んだ。
状況はすでに流血の惨事の様相だ。
「は、はいっ」
私はスマホを取り出そうとリュックの外ポケットに手を掛けた。
その瞬間──
『戻 れ』
(?!)
また──声が!
『戻 ら ね ば 女 の 腕 を も ぐ ぞ』
(そ、んな・・・・まさか・・・・)
「笙子さんっ、早くっ」
「・・・・」
「笙子さんっ」
「・・・・は、はい」
口先から返事は出たが私の身体は再び動きを止めていた。
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