自然の中で過ごす日々(5/8-11)
家で過ごす彼は制限がなくなったからか、リラックスしていて、昔話をしたり、ゲームや動画を見て自由に過ごしていた。
無理のない程度に用事を与え、一緒に食事を作りタイミングを見て認知行動療法をし、現在の問題点、アプローチ方法を彼との対話の中から考えていた。
私から見ると彼は確かに弱い。なぜここで引っかかる??というような場面も多くある。
でもこれが今の彼なのは確かだ。
1週間彼を観察し、心の動きや行動を見てきた。
『彼はこの壁を越えられる』
信じたい気持ちがそう思わせたのかもしれない。それでもそう感じた。
7日の夜中、彼を連れ出して出かけた。
湖から見える日の出を見せたかった。
霧の多い湖で家から車で7時間半かかる。
私と夫は真っ暗な道を交代で運転し彼は後ろで眠っていたが、空が少しづつ明るくなり目を覚ましたころには道路に野生のシカが見られるようになっていた。
「シカおるで!!」そう言って少し興奮した彼は道路わきのシカを見つけては私たちに「見て!またおるで!!」と楽しそうに声をかけた。
日の出に間に合ったけれど外はマイナス気温だった。
霧はなく湖面が少しづつ明るくなっていくのを毛布にくるまって眺めていた。
なんて綺麗な景色だろう。
寒いからと車から出てこなかった彼が黙って景色を眺めだした。
私はこの景色が少しでも彼の心を動かしますようにと願っていた。
その日は海沿いまで走り、すしを食べに行った。
北海道のすしはクオリティが高い。関東に住んでいる私たちには高級すし店の味が回転ずしの値段で食べることが出来る。
食べることが好きな彼はすごく喜んでいた。
海沿いの田舎道を運転させて、ドライブをした。
私たち夫婦は彼の運転に眠ることも出来ず緊張しぱなっしだったが、彼は楽しんでいた。
道の駅で仮眠をとり、観光地に1か所寄った。
彼はガイドになりきり「次はこちらの施設になりますねー」などまるで小学生のようにはしゃいでいた。
その日の夜は土地の名産品をテイクアウトしホテルで3人で食べた。
次の日は星空の見える土地へ行き、グランピングをした。
彼は初体験のアクテビティであるテントサウナを楽しみ、バーベキューをし夜はその名の通り満点の星空の中で過ごした。
私は彼が子供のころ、たいしたことをしていない。
生活で精一杯だったこともあるが、彼も私も不満をわかりやすく表出する次男の世話に意識が向いていたと思う。
彼が折れるまでため込んでしまう性格にしてしまったのは私の育て方というか、弱さを出しにくい環境下で育ててしまったからだと思う。
だからと言って時間が巻き戻るわけでもないし、それならこれからどうするかが問題だ。
このまま彼を宝物のように守っていくのもいいのかもしれない。
けれど私は彼を一生守れるわけでもなければ、この状態に自分自身が耐えられないことはわかっている。
彼に自分自身と向き合う術を教えたあとは、宝物である彼を手放して見守る覚悟をしなければならないな。
そう感じた自然の中での数日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。