第270話 副作用で大忙し
「あっ皆んないる!良かったよ」
「ユキヒコ君、急いでどうしたのかね?」
「そうじゃ、そんなに急いで何かあったのかな?」
ユキヒコ君が再びハヤト王国の王宮に戻って来た時、夕食の食卓には、学者隊の面々が、ひとりも欠けることなく揃っていた。
「やぁユキヒコ君、いらっしゃい。
戻って来るのが早かったね」
「ええ、ハヤト王。ちょっと用事でビスマス帝国に行っていただけですので」
本当はいったんログアウトしていたのを知ってるよ。
言わないけどね。
まぁ、ログアウトしようとするとこの国から出なきゃだめだから、間違ってはいないんだけどね。
「ユキヒコ様、只今ご用意致しますので、こちらへどうぞ」
アーチャがユキヒコを空いた席へと誘導して椅子を引く。
ユキヒコが着席するやいなや、すぐにカトラリが置かれ、夕食が配膳されたことにユキヒコは戸惑いを隠せないようだね。
もちろん料理を余分に作ってあったのもあるけど、ユキヒコ君がこの国に入ってきたことは、侵入してきた時に把握出来ていたから先に用意させておいたんだ。
なんでそんな面倒くさいことをするんだって?
そのほうが神秘性があっていいじゃん。
何か未だユキヒコ君が知らない秘密があると思わせておいたほうがユキヒコ君達の調査が延びるだろうし、他のプレーヤー達が送り込まれて来るかもでしょ。
そうなったら、AIも何か仕掛けてくるかも。
どちらにしても、先日ユキヒコ君が囚われた件は間違いなくAIのせいだろうし、今後地味にヤられると困るからね。
どうせなら、一気にカタをつけたいんだよね。
そんなことを考えながらその日は何事もなく過ぎ、それから3ヶ月の月日が過ぎた。
その間、俺の目論見通り、ユキヒコ君は大勢のプレーヤーを連れて何度もこの国を訪れて来た。
その中には護衛としてタロウの姿も見える。
彼の場合、護衛にもかかわらずメアリーの食堂に入り浸っていることが多かったけどね。
さて、大勢のプレーヤーがハヤト王国を訪れることになると、いくら箝口令を敷いていても情報は漏れてくるものだ。
当然運営側も俺達も予想済みであり、これまで秘密になっていたハヤト王国のことが、公式サイトを賑わせることになった。
これもユキヒコ君を仲介として、俺と運営側で調整済みのこと。
ユキヒコ達を通して、俺達の情報はあちらに流れているから、こちらに攻撃的な意図が無いことは伝わっている。
当然運営側の四宮さん達は俺が何者かは知らないわけだけど、まぁAIが創った自我を持つNPCって認識で納得してくれているようだ。
それよりもアバターのユキヒコ君が狙われたことで、俺達との協力関係を築いたほうが良いと判断したのだろう。
そんな感じでハヤト王国に大勢のアバターが入って来るようになり、ますます街が発展していく。
はじめから隠すつもりも無かったし、結果的に多くのプレーヤーが入って来ることで、AIも手出ししづらくなったのか、しばらくは鳴りを潜めているようだね。
そして俺はといえば、『無限の光』のジョウイチとして、AI調査のためにハヤト王国を訪れることが増えたかな。
サユリこと『無限の光』のユカリとともに2足の草鞋で二役に大忙しなんだ。
ただ、ここで大きな問題が発生してきた。
プレーヤーとして現実世界に居るということは、その間現実世界で時間経過があるということ。
つまり、モデルとしての活動も動くわけだ。
ゲーム世界に居る間は現実世界では時が止まっているため問題無かったけど、こればっかりはしょうがない。
俺と朝里、そして由美子さんの3人はまたしても多忙な時間を送ることとなってしまった。
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