第268話 ユキヒコ救出作戦4

ユキヒコの魔力残渣を追い掛けて空間を移動し続ける俺とサユリ。


もういくつくらい移動したのか分からないくらい移動を繰り返している。


昨日の夕方にユキヒコの最後の目撃談を聞いているから、およそ12時間は既に経っていると考えると、計算上700回以上は移動する必要がある計算になる。


まぁ、その空間から見える最古の時間軸を持つ空間に移動出来れば、もっと早く辿り着けるわけなんだけどね。


「お兄ちゃん!あれ見て!」


「おっ!あれはユキヒコかな?


よし、次はあそこへ飛ぶぞ!」


サユリが指差す空間には、朧げながら人影の様なものが見えた。


そこにはユキヒコの魔法の残渣もひときわ残っている。


俺はサユリの手を握りしめて転移を使って、その空間へと飛び込んだんだ。




「ユキヒコ君、大丈夫か!」


ここはハヤト王国王宮のユキヒコに割り当てられた部屋のベッドの横。


あの後、俺達はシャボン玉を頼りに元の空間の元の時間軸へと戻って、そこからここへと転移してきた。


すぐにユキヒコをベッドに寝かせてヒールを掛ける。


身体に傷は無いけど、体力や精神的な疲労が大きく、気を失ってたんだ。


戻って来てから2時間後、看病に付けていたメイドからユキヒコの意識が戻ったことを告げられ、今ここに居るってわけだ。


「ハヤト王様、ここは?」


「王宮の君の部屋だよ。気分はどうだい?」


「ええ、大丈夫です。


僕はたしか元コーラス王国の別邸跡にある祠に居たはずなんですが……


そしたら変な空間に引き込まれて…、そうだ!ステータスボード!


あっ、良かった。ステータスが見れる!」


「君はあの場所で複数の時間軸に分断された複数の空間で囚われていたんだよ。


俺達が行くのがもう少し遅かったら見つけられなかったかもしれなかったんだ。


間に合って良かったよ」


「本当にありがとうございました」


「女性と一緒にあそこまで行ったみたいだけど、誰と一緒だったのかな?」


「はい、大聖堂の修道女でリーシャさんと仰る方です。


あっ!あの方はどうなりましたか?」


「……修道女のリーシャ?

聞いたこと無いな。サユリはある?」


「わたしも無い」


「アーチャは?」


「わたしも存じ上げません。

あちらの人員管理もしておりますので、全ての方々を存じているはずですが、リーシャという方は知らないですね」


「でも、リーシャさんって言ってましたよ。


それより、彼女は……」


「ユキヒコ君以外の反応は無かったよ。


人間誰しも魔力は持っているから、もし一緒にあそこに居たら、絶対見付けてるはずさ。


でも全く見当たらなかったな」


「でも、たしかに……」


「ユキヒコ君を探している時に、君があの祠に着く前に寄った店にも聞いたんだけど、たしかに女連れだったそうだ。


だから、君が嘘をついているわけじゃ無いのは分かっている。


ただ、その女性が本当に人間だったのか……だけどね」


「リーシャさんが人間…じゃない……」


「そうだね。そして魔物でも魔人でも無い。


つまり魔力を全く持たないモノ……だな」


ユキヒコ君が何か思案を始めた。


たぶん、AIが創ったモノじゃないかと考えてるんじゃないかな。


AIについては株式会社ブルースカイでも調査しているはずだから、運営側から派遣されているユキヒコ君には、AIの調査も依頼されているはずだからね。


俺もそう思うよ。


でも今はNPCのハヤトだから、知らないことにしておくな。



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