第131話 パリにて1
パリの空港で電報堂の沢村部長の娘さんである沢村由美子さんに出迎えてもらった俺と朝里。
朝里のファンだという由美子さんは自ら志願して、今回のヨーロッパ取材旅行のアテンドを買って出てくれていた。
フランスだけじゃなくて他の国にもついて来てくれるそうだ。
正直、頼りない英語しかできない俺と一緒に来たスタッフだけじゃ心細かったから助かるよ。
一応、朝里は4ヶ国語話せるけど、彼女の独自インタビューとかもあるから、いつも一緒ってわけにはいかないんだよな。
そんなわけで、これから2週間、仕事頑張るぞーーー。
「取り合えず、宿泊場所のホテルに案内しますね。長旅でお疲れでしょうから、ホテルでゆっくり昼食をとってから、テレビ局にご案内しますね」
由美子さんが予約してあったタクシーに乗り込み、パリ市内、凱旋門から少し南に移動したセーヌ川のほとりにある高級ホテルに着く。
広い個室に案内され、シャワーを浴びて衣装替え。ディナーに招待されるってことで、それなりの衣装に着替えることに。
衣装だけでスーツケース2つ。だって朝里が毎日同じ衣装を着たくないって言うし。
たしかに、5ヶ国ほど周るのに全ての国で同じドレスっていうのもどうかとは思うが、ドレスって嵩張るからね。それを何着もだなんて、旅行で持ち込める範疇じゃないよ。
それにさ、俺にも最低3着は持って行けって言うから、仕方なく俺が2つで朝里が自分の荷物も含めて2つ持ってきたわけ。
えっ、俺の荷物?
スーツを除けばリュックサックで十分だよ。
俺は朝里のドレスを持って朝里の部屋へ瞬間移動する。
まだシャワーを浴びているみたいだから、クローゼットに衣装を仕舞いこんでさっさと自分の部屋に戻った。
それから俺も衣装を着替えて、由美子さんの待つレストランへ向かう。
入口でサインして中に入ると、窓際の見晴らしの良い席に由美子さんが座っていた。
「お待たせしました。ここ、綺麗な場所ですね」
「ええ、パリには公園が点在してまして、見晴らしは良いんですよ。
ところで、素敵な衣装ですね。よくお似合いです」
「有難うございます。由美子さんもお似合いですよ」
「ふふっ、丈一郎さん、お強いだけでなく社交性も十分ですわね」
「いえ、社交性なんて、とてもとても。しがない貧乏サラリーマンですから」
「謙遜されなくとも。お金の問題ではありませんわ。なんていうか、にじみ出る貴賓というか、場慣れというか。そんなものが溢れてきそうですよ」
社交辞令もあるんだろうけど、由美子さんが大層褒めてくれるんだけど。
まあ、アッチでは王族とも懇意だし、なんなら俺も王様だし...
その辺りの場数は踏んでいるけどね。
「お待たせしました」
運ばれてきたコーヒーを飲みながらそんな話しをしていると、朝里がやって来た。
長い髪をきれいにまとめあり、持ってきた中でも比較的上品なドレスを着ていて、清潔感が半端ない。
たぶん、由美子さんのドレスに合わせてきたんだろう。配色は反対色だが落ち着いたトーンに揃えられているので、まるでふたりで申し合わせたようになっている。
由美子さんも美人だし、ふたりで並ぶと双方引き立つような輝きを放っている。
現に、レストラン内にいる男性諸氏の目がこちらに釘付けになっているよ。
そして俺には、敵意も向けられているような....
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