第130話 沢村由美子さん
ジャパンテレビの食堂で須藤さんと話してから早1週間。
俺と朝里は成田空港の国際線搭乗口にいた。
今日から2週間の海外遠征である。
何をどうしたのか、部長から最大級の信頼を得た朝里は、すっかり俺のマネージャー気取りだな。
まぁ、こいつ4ケ語話せるクァドリンガルだから、本来なら心強い味方なんだよな。
俺なんて日本語すら危ういっていうのに。
「お兄ちゃん、パリ行きの搭乗が始まったわ。
行きましょ」
今回の旅はあちらのテレビ局からの招待なので、ビジネスクラスが予約されていた。
もちろん初めてのビジネスクラスにドキドキする。
優先的に案内されて搭乗すると、その快適さにびっくりした。
ビジネスクラスでこれなら、ファーストクラスってどんなんだろうなんて考えているうちに、ジャンボジェットは離陸。
一路パリへと向かった。
だいたい13時間のフライトを終えると、そこは『花の都パリっ』
声に出して感激してたら、朝里が「古ーーっ」だってさ。
入国審査を終えて、荷物を受け取り出口を抜けると、大きく『歓迎 結城様』って書かれた大きな紙が持ち上げられている。
どうやら迎えに来てくれた日本人コーディネーターの人みたいだ。
俺と同い年くらいの綺麗な女性である。
「大変お待ちしておりました。これから2週間、コーディネーターとして付き添わせて頂きます、沢村由美子と申します。
よろしくお願いしますね」
「結城丈一郎です。こっちは妹の朝里です。
沢村さん…ですか?どこかで聞いたような…」
「朝里です。よろしくお願いします。
お兄ちゃん、沢村さんっていったら電報堂の沢村営業部長さんじゃない?」
「あっそうだ。同じ苗字だけどまさかね」
「お兄ちゃん、声に出てるよ!」
「ええ、その電報堂の沢村はわたしの父なんです。」
「「ええっーー!!」」
由美子さんは電報堂の沢村部長の娘さんで、ここパリに留学中とのこと。
俺がヨーロッパを周ることを聞き付けてアテンドを志願してくれたみたいだ。
「実はわたしは朝里さんのデビュー当時からのファンなんです。
こちらでは東京でのコレクションは放映されていませんから、フォールコレクションの時は父から送ってもらったビデオで見てたんですよ。
そしたら、丈一郎さんの素晴らしい殺陣に目を奪われました。
こちらでの知り合いのテレビプロデューサーに映像を見せたら物凄く興奮しまして……
それで、ウインターコレクションの時には、沢山のフランス人がそちらに行ったはずです」
「ええ、フランスからもたくさん来られていましたが、他の国…特にヨーロッパ各国の報道の方々が多かったです」
「どうも国を跨っての交流が多いみたいで、他の国にも映像を流しちゃったみたいですね。ご迷惑をおかけして、ごめんなさい。」
「いえいえ、既に日本では結構騒がしくなっているんで、どおってことないです」
「丈一郎さんは、心の広い方ですね。失礼な言い方かも知れないですけど、剣術同様、非常に剛毅な方かとお見受けしました」
「そんなことないですよ。しがないサラリーマンですから」
最近日本でもこんな会話が続いていたから、結構慣れっこになってるかな。
少し前の俺だったら考えられなかったけど、アッチで王様になったりしてそれなりに成長したのかも。
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