第129話 マネージャーは……

一躍『時の人』になってしまった俺、結城丈一郎です。


会社には、社長直下の『特命広告室』なるものが出来て、部長が室長兼俺のマネージャーということになった。


メディア対策とお目付け役といったところかな。



今日もジャパンテレビの須藤プロデューサー改め須藤『情報制作局長』様と一緒にランチミーティング中。


須藤さんなんだけど、今回の一件で海外のメディアにも影響力を持たせる必要が出て来たため、情報制作局の局長に昇進したらしい。


そのため、非常に機嫌が良くって、しょっちゅうランチミーティングに誘ってくれるんだ。


もちろん夜もだけどね。当然ムフフな店には行かないよ。


売り出し中の若手?モデルはイメージが大切だからね。


ランチミーティングって言っても、撮影やインタビューでジャパンテレビに行った時に、普通に食堂で食べるだけだけなんだど。


まあ、街のカフェなんかで食べてたら、すぐに人だかりが出来ちゃうから仕方ないとして、その場には、朝里もちょくちょく参加してるんだよな。


元々須藤さんのお気に入りは朝里だったから、呼ばれてもおかしく無いんだけど、学校はどうしたんだ?


「もう卒論も単位もバッチリだから、行かなくても大丈夫。


それに大学院に進学するから、就職先での研修なんかも無いのよね」


そういや、朝里って賢かったんだった。


まぁ、今頃あわあわしてるのもどうかと思うけど。


「丈一郎君。実はね、朝里君には君のマネージャーをお願いしてるんだよ。


君のところの部長さんからね、国内メディアの対応で海外遠征には行けそうに無い、って相談されたんだ。


朝里君なら気心も知れてるしね。


それに、実はね、朝里君にもいくつかの国から招待が来てるんだ。


どうやら君達ふたりで、裕太君達と殺陣をしただろう。


あの光景を見て、『Oh!忍者ガール!』とかってね。


特にフランスとイギリスは熱烈に朝里君を求めてたよ」


そう、最終日の時代劇での一コマ。


流れ者の俺を城下指南役の裕太君達が取り囲むシーンで、それまで俺の旅に寄り添っていた謎の美女朝里が、着物を脱ぎ捨てると、そこには女忍の衣装が。


ゲームの中では盗賊だけど、盗賊じゃ様にならないから、くノ一だね。


そしてどこから現れたのかご都合主義の忍刀を片手に、俺と一緒に殺陣に加わるという演出があったんだ。


2週間を通して影のある清楚な女性を演じてた朝里の突然の展開に、会場は興奮の坩堝に。


元々運動神経が良い上に、向こうでの実戦で鍛えられた太刀筋は、裕太君にも匹敵するくらいだったから、皆んな驚いたよね。


「フランスではテレビ出演の時に、殺陣を披露することになっているみたいし、イギリスでは、あちらの剣術道場の師範と対決することになってるから頑張ってね」


「お兄ちゃん、頑張ろうね」


「朝里、卒業旅行みたいに思ってるだろう?」


「もちろん!お兄ちゃんと一緒に2週間の卒業旅行なんて最高よね。フフフ」


「お前なぁ」


「おっと、もうこんな時間だ。


丈一郎君はこれから下で収録とインタビューだろ。


さぁ、頑張っておいで」


「須藤さん、わたしもマネージャーとして一緒に行っても良いわよね」


「もちろんだとも。モデルの先輩として、マネージャーとして、しっかりと頼んだよ」


「もちろんよ。さぁお兄ちゃん!行こっ!」


うーーん、何だかなーー。


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