第128話 メディアからモテモテです
『東京ウインターコレクション』初日、俺と裕太君の舞台は激しい剣撃の嵐となってしまった。
我を忘れて暴走する裕太君に一撃を入れてすぐに回復させることで、なんとか理性を取り戻した裕太君。
そしてその直後、裕太君と観客席のお客さんの前で派手に倒れた俺。
「…………」
静寂が会場を包み込む。
「……こっ、これは……」
アナウンサーが1足先に気付いたところで、俺は立ち上がった。
「じ、丈一郎さんも無事なようです!
よ、良かった!
ほ、本日より開幕となりました東京ウインターコレクションの初日を飾るに相応しいおふたりの演舞でございましたーー!
皆様、大きな拍車でおふたりを讃えてあげて下さい!!」
「「「キャー!!」」」
「「「カッコイイ!!」」」
「「「怪我大丈夫ーー」」」
「「結婚してーー!」」
呆気に取られている裕太君だけど、そこは本職の俳優さん。
すぐに状況を理解して、裕太スマイルを振り撒いているよ。
「丈一郎さん、こちらへ」
一歩引いている俺を呼ぶと、俺の手を取って高々と持ち上げる。
「丈一郎さん、無茶苦茶強かった。
はっきり言って次も勝てる自信ないですよ。
今日は俺が勝たせて頂いたということです。
丈一郎さんにも拍手をーー!」
「「「キャー!!」」」
「「「ステキーー!!」」」
「「「怪我大丈夫ーー」」」
「「結婚してーー!」」
誰でもいいんかい!
「丈一郎さん、わざと負けて下さいましたね」
「えっ、なんのこと?」
「分かってますよ。俺の攻撃全部見えてたでしょ。
言っときますけど、これでも俺、西郷無限流皆伝なんですからね。
それが本気を出しても全く敵わないなんて……」
何をどう返せばいいのやら。
営業マン生活が身についているからこその忖度が頭を混乱させる。
「まぁ、俺の修行が足りなかっただけですね。
でも、丈一郎さん。これからが大変ですよ。
このコレクションには大河ドラマのプロデューサーも来てますし、民放各局のお偉方も沢山います。
これだけの演舞をしたんですから、無事に帰れるとは思わないことですね」
裕太君にどう返そうかと高速演算を使おうとしたところで、、裕太君からの爆弾発言が……
負けた……じゃ駄目だよね。
それからの2週間。
予約入場のはすが、日に日に厳つい武芸者の皆様が増えていき、終演後には立ち合いを挑まれることもしばしば。
初めは大物時代劇俳優ばかりだったんだけど、だんだん本物の人達が現れ始めた。
このレベルの人達だと誤魔化しが効かないね。
仕方なしに勝ってしまうことに。
それが呼び水となって、一段と増えていく感じだね。
ちなみに裕太君。
かなり強かったみたいだ。
全日本剣道選手権大会を何連覇もした強者と同じくらいの強さだったんじゃないかな。
そしてグランドフィナーレを迎えた最終日の打上げには、海外からの記者なんかも現れて大混乱状態に。
突然のことで通訳がいない。
どうするんだ?みたいな雰囲気になったんだ。
でも、俺には言語理解スキルもあるみたいで、英語でもフランス語でも『お茶の子さいさい』てなもんさ。
向こうでドワーフ達と話すように普通に会話したもんだから、また大変なことに。
結局、ジャパンテレビの須藤プロデューサーが間に立ってくれて、なんとかこの場は収束へ。
その代わり、ジャパンテレビを筆頭に各テレビ局や出版社、海外のメディアとのインタビューを受ける羽目になったんだよね。
「あーあ、大変なことになったな。
そうだ、会社どうするんだ?」
「結城君。お手柄だ!
これだけのメディアと親密な関係になれるチャンス。
営業マンとして見逃すはずはないよな。
会社としても全面的にバックアップするからよろしく頼んだよ」
俺の気配察知にも引っ掛からなかった、社長の登場で、それからの俺のサラリーマン生活が大きく変わることになるとは、その時は……って、気付いているに決まってるじゃないか!
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