第126話 『激闘、冬の陣』?
『人の噂も七十五日』という。
あれから2ヶ月が経とうというのに、騒ぎが鎮静化する気配は全く無い。
さすがに朝里を目的に俺に殺到する若手社員は減ったものの、俺が逆に肉食女子達に狙われることになったりと、相変わらず賑やかな生活を送っている。
そうそう、取引先が増えた。
最初は朝里や俺を目当てに新規商談を持ち掛けて来るのだが、高速演算スキルのお陰で営業トークが爆発的に上手くなった俺が、それらを受注に繋げたのは当然だろう。
営業成績が飛躍的に上がった『出来る俺』を肉食女子達が見逃すはずもなく、ますます俺の周りの賑やかさに拍車が掛かっているのだ。
「お兄ちゃん、今度の『東京ウインターコレクション』出るんでしょ」
「うーーん、石渡さんに頼まれてるから嫌とは言えないしな。
でもさーー………」
「会社で問題になってるの?」
「いや、最初はそうだったんだけど、あれから営業成績が爆上がりでさぁ、社長や部長も後押ししてくれている」
「それじゃあ問題無いじゃ無い。
また、一緒に出ようよ。
沢村さんや須藤さんからもオファーが来てるんでしょ?」
「うーーん、俺の平穏なゲーマー生活が……」
「今更遅いわよ」
俺の部屋で朝里は今日も晩飯を作ってくれている。
『東京フォールコレクション』から1ケ月くらいは俺のアパート近辺も記者達で賑わってたけど、落ち着いてきた頃から、前みたいに朝里が通って来ることになったんだ。
いくら近所の人達に聞き込みをしたところで、何の情報も得られないことが分かったらしく、朝里が通って来るようになったからといって、記者達が増えることは無くなった。
俺達はといえば、相変わらず向こうの世界を楽しんでいるよ。
いくら向こうにいる時間が長くたって、こっちでは全く時間経過が無いからね。
パパラッチしている記者達からすれば、ご飯を作って一緒に食べている仲の良い兄妹にしか見えないだろう。
だってさ、ご飯を食べ終えたら、すぐに朝里を実家に送って行くだけのルーティーンなんだから。
アサリ・ユウキ王国も順調そのものだ。
俺が普段着に石渡さんのブランドを着るようになったことで、NPCの皆さんにも石渡さんブランドが大流行。
元々繁盛していた石渡さんのブランドだけど、俺の件で男性物の売上げが爆増していた上に、『アグニストゥースオンライン』からの通販売上げが謎の爆増となったわけで、生産が追い付かないからと、俺の会社でも生産をお手伝いすることになったんだよね。
だから営業職の俺としても石渡さんの頼みはどうしても断れないわけだ。
「そうだな、出させてもらうよ」
「それが良いわ。
というか、お兄ちゃんが出ないと不味いのよね。
ほら、前回はお兄ちゃんの殺陣が注目を浴びたでしょ。
それでね、今度のコレクションでは若手俳優の中でも特に殺陣の上手い人達が出演することになってるのよ。
フォールコレクションの時に来ていた朝比奈由里子さんを覚えてる?
彼女が猛烈にプッシュして、出演者の人選までかって出たのよ。
だから本来なら共演NGの俳優同士が出たり、時代劇仕立ての場面では町娘役でASK48のメンバーも多数出るみたいなの。
なんてったって、今度のコレクションの副題は『激闘、冬の陣』なんだからね」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
いつもお読み頂き有難うございます。
もし面白いと思われましたら、♡や☆を頂けたら嬉しいです。
今後の励みになります。
それと新作投稿しました。
「勇者日記〜窓ぎわ文官かく戦えり〜」
自由過ぎる召喚勇者を観察するように指示された文官の心の声を綴った日記です。カクヨムコン9短編エントリー
お読み頂けたら嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます