第124話 完璧な記者会見
出社したらビルの前で突然記者に囲まれた俺。
近寄ってきた記者のひとりに誘われるままに、さながら即席の記者会見場のような場所に連れて行かれた。
どうやら昨日朝里が俺の部屋に入るのを見られたようだな。
高速演算が冴え渡り、さぁ質問に答えようかとしたその時、我社の社長と部長のはからいで、会議室を借りられることになったんだ。
「皆さん、これから会議室へ案内しますので、そこで質問をお受けします」
俺達の会話を聞いていた記者達は、顔を見合わせている。
そりゃそうだろうな。たぶん、ほとんどがゴシップ中心の週刊誌やタブロイド紙だろ。
邪険に扱われても、いきなりその場で会見場が用意されるなんて思いもしなかったんだろうな。
少し啞然として、俺が促すまま、ビルの中へとついてきた。
「結城丈一郎さん、こんな立派な会見場を用意してもらって申し訳ないですねぇ。
ところで席順はこちらで決めさせてもらっても?」
15階にある第1会議室に全員を迎え入れると、最初に俺に話し掛けて来た記者が、話し掛けてきた。
「ええ、その方が助かります」
『フルーツポンチ』の三好って名乗ったその男は、テキパキと記者達の席順を割り振り、質問順まで決めてしまった。
「結城さん、お待たせしましたねぇ。
各社の準備も出来たみてぇなんで、始めましょうか」
うん、手際が良いね。この人と仲良くしておけば、記事の内容もおかしなものにならないかも。
冒険者として鍛えられた直感でそう思った。
俺も壇上に立ち、スマホの録音機能をオンにすると、早速三好さんから最初の質問が飛び出した。
全ての質問に応答し終えたのは、この会議室に入ってからおよそ2時間後。
前面のホワイトボードには、質疑の要点がまとめられている。
「結城さん、あなた無茶苦茶記者会見慣れしてるねぇ。
いや、普通のサラリーマンがそんなわけねえか。
とすると、かなり優秀ですねぇ。
だいたい、俺達ゴシップ記者っていうのは、独特の空気感を醸し出しているみたいでね、大会社の社長や大学の先生方でも囲まれると冷静さを欠いてしまうんですよ。
冷静に会見出来るのなんて、大手プロダクションの社長くらいじゃないですかねぇ。
いやぁ~、堂々とした記者会見、恐れ入りました」
「お褒め頂き有難うございます。
これも三好さんが居並ぶ記者の皆さんを上手くコントロールして下さったお陰ですよ。
有難うございました」
ホワイトボードに書かれた内容はすぐに同僚が文書化した後、コピーを参加した記者全員に配布してくれていた。
一応、内容は石渡さんや朝里にも送って確認してもらった。
いやぁ~、俺って実は有能かも!
全て高速演算のお陰だけどね。
記者の皆さんは、会見の内容をまとめたコピーと、石渡さんが提供してくれた東京フォールコレクションでの、俺や朝里の写真を持って、大人しく帰ってくれたよ。
当然同じ物をジャパンテレビの須藤プロデューサーのところへも送ってある。
こちらは昼のワイドショーで流されるみたいだ。
恐らく記者達がそれぞれの席につく頃には、テレビで流されてるだろうな。
一応、テレビで流れない情報も各社に1つづつお土産として持ち帰ってもらった。
これは三好さんからの提案による。
最初にテレビで流されてしまったら、ゴシップ記事としての価値が下ってしまうから、お土産を持たせて欲しいとの話しが発端だ。
どうせなら、別々の情報を持って帰ってもらった方が良いだろうということになり、参加15社分のネタを用意して、それぞれ個別に渡した。
これで15社全ての一面がスクープとして扱われるらしいな。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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それと新作投稿しました。
「勇者日記〜窓ぎわ文官かく戦えり〜」
自由過ぎる召喚勇者を観察するように指示された文官の心の声を綴った日記です。カクヨムコン9短編エントリー
お読み頂けたら嬉しいです。
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