第123話 記者が集まってますよ
「結城丈一郎さんですよねぇ!
『フルーツポンチ』の三好っていいます。
一昨日東京フォールコレクションのトリをとられたよねぇ。
お疲れ様でしたねぇ。
ところで、この写真のお相手、これは女子高生のカリスマと言われているモデルの朝里さんですよねぇ。
コレクションでも共演されておられましたが、お付き合いされてるのですかねぇ?」
「この写真は丈一郎さんの自宅だと思われますが、朝里さんとは深い関係なのですか?」
わー、わーとひっきりなしに質問を受ける。
パニックになりそうだったけど、また高速演算スキルが良い仕事をしてくれる。
烏合の衆でしかない記者達の、的を得ない誘導尋問みたいな質問が、ゆっくりと確実に聞き取れ、その真意を感じ取れるのだ。
「皆さん、落ち着いて下さい。俺はどこにも行きませんし、キチンとお話ししますから。
その前に、会社にひと言言って来て、いいですか?」
「結城君だね。その必要はないよ。
私の方で手続きをしておこう。
君はとりあえず、この事態を収束するように。
そうだ、必要であれば第1会議室を使い給え」
どこかで聞いたことのある声に振り向くと…社長と部長がいた。
「結城君。昨日、須藤から連絡があってね。
今日会社に記者連中が集まって賑やかになるだろうから、対処してやってくれだってさ。
東京フォールコレクションの話しも聞いたよ。
アイツとは大学の同窓でね。
全く、迷惑千万なことだ。
とにかく社長もこう仰って下さってるんだ。
皆さんを会議室にご案内したらどうだろう」
どうやら須藤プロデューサーが、こうなることを予想して、同窓の部長に連絡してくれていたみたいだな。
「社長、部長、有難うございます。
皆さん、これから会議室へ案内しますので、そこで質問をお受けします」
俺は20人ほどの記者達を案内して、第1会議室へと向かった。
〈〈とあるゴシップ記者視点〉〉
「三好!吉原の奴があのカリスマモデル朝里のスキャンダルをすっぱ抜いたぞ。
今すぐストライドビルへと向え!
お相手の名前は結城丈一郎だ!」
俺はゴシップ雑誌『フルーツポンチ』の記者で三好多喜二という。
しがないゴシップ記者だ。
昔は足でゴシップを稼げたから、俺も羽振りが良かったんだが、最近はスマホのせいですぐに写真が出回るようになってしまった。
一報を仕入れて現場に向う頃には、既に記事になっているこのご時世。
俺達の存在意義は風前の灯火状態だ。
そろそろ職でも変えるかなんて考えて、求人雑誌を捲ってた時、編集長のガナリ声が聞こえてきた。
とりあえずカメラとヴォイスレコーダーを持って、指定されたストライドビルへと急ぐ。
ビルの下に着くと、既に数人の同業者が来ていた。
顔見知りもいるな。
挨拶を交わして、1番前に陣取る。
何人かが横並びで整列してれば、後から来る奴らは自然と後ろに並ぶのがこの世界の仁義だ。
横入りなんて許さねえよ。
サッサと会見場所を固めてしまうに限る。
そうして待つこと30分。
「三好、早えじゃねえか。特等席じゃねえか」
いつの間に来たのか吉原が横にいた。
この業界、持ちつ持たれつのところもあり、仕入れた情報は懇意にしている雑誌に回してやるんだ。
もちろん時間差はあるけどな。
つまり俺達よりも先に来ていた奴がいるってことは、吉原以外にも成功した奴がいたってことだ。
「アイツだ。彼が朝里チャンの彼氏だな」
そして次々と同業者達が集まって来た頃、吉原が自信満々にひとりの男を指さした。
俺はその場に吉原を待たせて、その男に向かって行く。
「結城丈一郎さんですよねぇ!一昨日東京フォールコレクションのトリをとられたよねぇ。」
よし、先手を取ったぞ!
俺は結城丈一郎氏を吉原がいる前に連れて来ると、そこは即席の会見場所となった。
よし、完璧だ。明日印刷予定の『フルーツポンチ』のトップページは俺が差し替えてやるぜぇ!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
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今後の励みになります。
それと新作投稿しました。
「勇者日記〜窓ぎわ文官かく戦えり〜」
自由過ぎる召喚勇者を観察するように指示された文官の心の声を綴った日記です。カクヨムコン9短編エントリー
お読み頂けたら嬉しいです。
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