第54話 ダイナマイトでぶっ飛ばせ
ダウジングによる温泉探索は全くの不発に終わってしまった。
っていうか、最近は忙し過ぎて温泉どころの騒ぎじゃなくなった。
というのも、アビスバ商会を解散に追い込んだことで、アダム王子と俺の名が一躍有名になったんだ。主に大商人達の間で。
サーガスがかなりあくどいことをしてたみたいで、抑圧されていた商人達が喝采したって話しだ。
その上、その張本人のアダム王子とアミル皇女の結婚特需があったり、国境がなくなって、俺がそこに街を作ってるって噂になったりと、今大商人達の間では、如何に俺の領地に出店するかが大きな話題になってるらしい。
いやもう現実には噂じゃなくなってるんだけど。
とりあえずこの街にある俺の仮屋敷には、この世界の大商人達が連日連夜詰めかけてきている。
その対応だけで、ここ2週間ほどは忙殺されている状態だ。
まあ、商会を招致したかったんで渡りに船ってもんだけど、何もそんなに必死にならなくてもって感じだね。
そんな感じで、ダウジングの失意をすっかり忘れていた頃、それは起こった。
「大将、この岩山はどうしましょう?」
「そうだな、このまま残したら街道を大きく迂回させなきゃいけねえ。真ん中に穴を空けてトンネルでも掘るかい」
「でもこの岩山デカすぎますぜ。掘れますかい?」
「ああ、一応そんなときのために爆薬っていうのを預かってる。領主様がお創りになったものらしいが、火を着けると大魔法くらいの爆発が起こるらしい」
「へえーーー、さすがは大冒険者様だ。なんでも出来なさる」
「本当だぜ、全くよーー。この街道だって、少し前までは国境の砦と石壁が続いていたんだぜ。
それをさー、領主様があっという間に取り除いて、街道に替えちまったっていうじゃねえか。
それで、その壁や砦に使われてた巨石をどうされたと思う?」
「さあて、全く見当がつきやせん」
「神王国と共和国との国境に砦を作っちまったってよ。それも1日もかからずにだと。
たまげたのは向こうの守備兵達だ。ひとりの青年が来たと思ったら、どこからともなく巨石を出して、国境の壁に積み上げていったんだからな。
30人以上使っても動かせるかどうかわからないような巨石を何百個も何もねえ空間から取り出してはポイポイ積み上げていくんだ。恐怖でしかないだろう。
お陰で、両国の守備隊長が領主様の所へ挨拶に来たっていうぜ」
「へええーー、剛毅なもんでさあ。ところで大将、それ使っちゃいましょうや。せっかくあるんだし」
「そうだな、とりあえず1つ使ってみるか」
ここは『コーラス神王国』にほど近い工事中の街道。
ハヤトが国境の壁を取り除いた後に一応街道を作っておいたんだけど、一部岩山を石壁の代わりに使っている部分があって、そこだけ街道が途切れている。
街道周辺の土地を整地していた工事責任者の大将は、この岩山をどうしようかと悩んでいた。
結局、ハヤトからもらっていた『お手製ダイナマイト』を使って岩山に穴を空けようってことになったようだ。
いくら現代に戻れるからといってダイナマイトなんて手に入るわけがないんだけど、そこは何でも教えてくれる動画サイトのお陰で、ハヤトでも作り方は分かる。
後は材料だが、こちらの世界で稼いだ金貨をポケットに入れておくだけで、1金貨10万円に自動変換されるのだから、金は使い放題。
金さえあればなんだって手に入るのだよ、今の時代はね。
ということで領内の造成用にダイナマイトを製造していたのだった。
「大将、細長い穴を空けておきましたぜ」
「おう、それじゃこれをぶっ刺してっと。お前ら!危ないから下がっとけよ。石の破片が飛んでくるらしいぞ!!」
30メートルくらいの導火線を延ばして別の岩陰に隠れると、辺りにいた作業員達も蜘蛛の子を散らすようにそれぞれそこから離れていく。
「いくぞーーー!!」
親方は恐る恐る導火線に着火。パチパチと音を立てながら、導火線が短くなっていく。
ドッカーーーーン!!!!
「あっぶねーーこの辺りまで石が飛んで来たぜ。おい見てみろよ!あの穴!!」
「すげーーー!本当にえぐれてやがるぜ!!
大将、もっと派手にやりやしょうぜ!」
「お、おうよ。お前らダイナマイトをぶっ刺す穴10ほど開けとけ。今度はまとめていくぜ!!」
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