第53話 ダウジングするよ

高台から延びる4本の街道。北、南にはそれぞれ10キロメートル、西、東にはそれぞれ5キロメートルほどになる。


北、南の街道は王国と帝国の国境線を取り除く際に一緒に作っておいたので既に完成している。

西、東方面の街道については、俺の屋敷に住み込んでくれている庭師の棟梁に頼んで、地域の住人達を使って作ってもらうことにした。

別に急ぐ話でもないから、任せようと思う。


元々この辺りは、王国と帝国を繋ぐ国境の町としてそれなりに発展していたので、それを踏襲しながら再編するかたちだ。


多くの守備隊が常駐していたこともあり、おこぼれに預かろうとする傭兵や冒険者達もそれなりの人数がいたから、人工は足りているみたいだね。


「さて、後は丘の上に領都を作るくらいですかな。ここは国境の門がありましたから、好きなように街が作れますね」


「そうだな、セバスさん、俺の案聞いてくれる?」


「ハヤト様の領地ですから当然です。是非お聞かせ下さい」


「街道を挟んで4つに分けと思うんだ。そうだな縦10キロメートル横5キロメートルくらいの四角になるように。


そして街道の交差点を中心として4角形の環状道路を内から外に向けて3本作る。


これが住民達の生活道路になるね。


街道沿いは全て商業区として商店や飲食店を誘致し、それ以外には住民の生活区域としたい」


「...なるほど、よく考えておられますな。将来的に住民が増えたとしても、すっきりとした街になりそうです。


愚案ですが、別々の環状道路沿いに工業区、住居区と分けるのはいかがでしょうか?


特に工業区は音や匂いが街中に拡がるのを防ぐ手立てではありますが、それなりの規模になれば、各国から職人が集まってきて工業製品の特産地になるやもしれません」


「いいですねそれ。是非採用させて下さい。それに農地の区画も必要になるな。

ああ考え出すといろいろ出てくるなーー」


「ははは、そうですな。それとお忘れになってはいけないものがあるのでは?」


「忘れてるもの...あっ!そうだ温泉だ。早く温泉を掘り当てて温泉区画も作らなきゃ。


セバスさん、よく気が付いたね。それだよ、それが一番の目的だったね」



なんだか街づくりシュミレーションをやっているみたいで忘れてたけど、本来の目的は温泉を掘ることだったんだよね。





全体的な街の構想も固まり、実際の街作りは皆に任せる。


俺の屋敷の人達も大勢協力してくれているけど、元からの住人達も非常に協力的だ。


セバスさんが町村を回って説得してくれたことも大きいし、アダム王子とアミル皇女の婚姻をこの地でやったことも大きい。


上手い具合に保たれていたとはいえ、国境近くでは緊張感によるストレスは並大抵じゃなかったんだろうな。


それが、両国の婚姻関係という一番良い形で緩んだんだから、住民達の喜びはひとしおだろうね。


それで俺はというと、温泉探しに没頭中。


ビスマス帝国でイベント『間欠泉での戦い』がある以上、必ず温泉が出るはずなんだ。

ここも元ビスマス帝国だし。


温泉を掘るったって無作為に掘っても無理だよな。


ちゃんと事前に調べてあるさ。あくまでも日本の基準だけどね。


1つ目は掘る場所。やみくもに掘るわけにもいかない。


地質調査してくれる専門家がいるみたいだけど、この世界にいるはずもなく、日本から連れてくることも出来ない。


となると某芸能人がテレビで温泉探しに使ってたやつ。そう2本の折り曲げた金属棒を持って開いたら温泉があるっていうの。その名も『ダウジング』


通販で売ってたから買ってきた。よく見る2本の折れ棒とペンデュラム 。

ペンデュラム っていうのは糸の付いた金属製の振り子で、棒と併用して使うみたい。


で、やってみたけど、全く役に立たなかった。


どうやら魔力にも反応するみたいで、出した瞬間グルングルン回って反応もへったくれも無かったんだ。


残念!


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