第48話 どうやってやり込める?

「最近の研究では、魔力を蓄積させる媒体として、ダイヤが最も効率が良いと言う説もある。


そうなれば、これほどのモノを大量に採取できるとなれば、貴国は莫大な利益を生むのであろうな」


「さすがは陛下。まだ数日前に神王国で発表された新説についてご存知だとは恐れ入りました。


たしかに父王もそう考えておいでです。

それで、今日皇帝陛下にお持ちした次第なのです」


「ふははは、なるほどそう言う事か。分かった。父王に我が了承したと伝えてくれ。


それとアダム王子、娘のアミルをやろう。大事にせよ。そのつもりで来たのであろう」


「有難き幸せ。アミル皇女宜しくお願い致します」


「アダム王子、宜しくお願い致します。


それと、我が伴侶になられるのであれば、ひとつ試練を越えて頂かねばなりません。


お父様、よろしいですわね」


「ああ、アダム王子なら見事に乗り切って見せるだろう」







「ハヤト殿、どうしようか?」


「そうですね。アミル殿下に婚姻を迫る商人ですか。


それも大陸を股に掛ける豪商アビスバだとは」


アビスバ家は商人の身でありながら、王族や貴族に金を貸付けたり、戦争では武器の横流しもしたりと手広く商売を拡げている。


借金で首根っこを掴まれている貴族達も大勢おり、主人であるサーガスは、絶大な権力を持っていた。


各国の王侯貴族に強大なコネを持つサーガスならば、戦争を起こさせることすら不可能では無い。


いや、既にいくつかの戦争ではアビスバ家が裏で糸を引き、双方に武器を売り付けることで莫大な利益を得ていたはずだ。


そのサーガスがアミル殿下を狙っているというのだ。


「暗殺してしまうか」


「いやそれは愚策でしょう。


そんなことをすれば他の商人達から総スカンをくらいますよ。


上手く資産を没収出来れば良いんですけど」


「わたしも会ったことが無いが、ありゃ狸だって父が言ってたよ。


ひと筋縄ではいかないよ」


「そうですね。何か全財産を使わせることが出来れば良いんですけど」


「そうだ!ダイヤはどうだ。あの大きさのダイヤをアミル殿下が欲しがってるってことにすれば、買うんじゃないか?」


「買うかもしれませんね。だけどあれは本当に価値がありますからね。余計に儲けさせることになるんじゃ。


高値で売り付けた後で、価値が暴落すれば良いんですけどね。


まっ、そんなカンタンな手には引っ掛かりませんよ」


「価値が下がるか……」


「そうですね、価値が大きく下がれば………


そうだ!上手く行けば1石2鳥も狙えるかも!


アダム王子、ちょっとお耳を拝借」


そこからの俺達の動きは早かった。





「サーガス殿、これは貴殿を見込んでの話しだ。


だが、いくら断って貰っても構わん。


他に話しを持っていくだけだからな」


「アダム王子、たしかにわたしの耳にも巨大ダイヤの話しは入っております。


そして、それが高価で尽きない魔力エネルギーになることも。


膨大な魔力エネルギーは、各国の領主様達が結界を張るために必要とされております。


ただ、1領主でこれをいくつも購入するのは財政的にも苦しい。


私どもが一括購入し、お貸出しするというアイデアでしたな。


たしかに全財産を食い潰すほどの初期コストが掛かりますが、すぐに回収でき、その後も安定して収入が見込める。


なるほど、悪い話ではありませぬな。


しかし、そこまでリスクを負う必要もわたしにはありません。


他に持っていけるのであればどうぞ、そちらの方に儲けさせてあげて下さいな」


残念そうな顔をしてるが目がほくそ笑んでいるな。


「そうか、それは残念だ。

それでは失礼するぞ」


アダム王子はなんの躊躇いもなく席を立とうとする。


「まぁ、アダム王子、お待ち下さい。


せっかくおいで下さったのですから、昨日入手したばかりのテージリンのお茶でも如何ですかな」


「テージリンか、今年は豊作で質も最上級だと聞いた。


では馳走になっていくかな」


王子が再び座ると、ホッとした顔が垣間見れた。


「後学のためにお聞きしてもよろしいですか」


「うん?何をだ?」


「このダイヤの売り先についてです」


「ああ、そのことか。教える義理も無いのだが、せっかく馳走になったのだ。


他言は無用だぞ」


「はい、心得てございます」


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