第47話 巨大ダイヤを献上するよ

アダム王子と俺は、転移門を使ってビスマス帝国の検問所にやってきた。


アダム王子が来ることは事前にビスマス皇帝から連絡が入っており、特に問題もなく入国を許される。


検問所の奥には宿場町があり、少し移動すると第2の門が見えた。


第2の門でも検閲があり、そこを抜けると、別の転移門がある。


ここから帝都へと移動できるようだ。


「アダム王子、お待ち致しておりました。

皇帝陛下の侍従で御座います。


陛下のご指示によりお迎えに参りました。」


丁寧な態度で言葉も柔らかいが、どこか含みがありそうな雰囲気が今後の展開に絡みそうに思えたのだが、名前を名乗らないところを見ると、単なるモブなのかもね。


侍従さんに案内されて転移門を抜けると、城の中庭に出た。


「さぁ参りましょう」


案内されるままに城の内部を進んで行くと、一際豪奢な扉の前に立つ。


扉が自動的に内側に開き、誘われるままに中に進むと、赤絨毯の向こうにビスマス皇帝の姿があった。


「前へどうぞ」


侍従さんの言葉に前に進む。


前を行くアダム王子が立ち止まり片膝をついたので、一歩下がったところで真似をして膝をついた。


こういうのは先に教えておいて欲しかったよ。


「アダム王子、よく参られた。」


「本日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございます」


「久しぶりだな。前に会ったのはそちの王太子指名の時だな」


「ええ、もう3年にもなります。


陛下もお元気そうで何よりでございます」


「ふむ、父王もご健勝か?」


「はい。最近は政務に忙しく、少し肥ったなどと申しております」


「我も同じだ。歳のせいもあるがな。


ところで随行しておるものは、初めて見る顔だか?」


「はい、我が国で昨今メキメキとその実力を伸ばしております冒険者のハヤトでございます。」


「ほう、そちが噂に聞くハヤトか。


長年攻略されず、もう攻略は不可能とまで言われていたルビーの完全攻略をソロで実現したそうだな。


しかも既にダイヤモンドの深層まで攻略を進めておるという話しではないか。


最近の貴国の急速な発展はそちの力によるものだと聞いておるぞ」


「陛下のお耳汚しになっておりますとは恐縮です」


「ほう、なかなか上手く返しよるな。

どこかの貴族の出か?」


「いえ、庶民の生まれでございます。


付け焼き刃の言葉、お怒りを頂戴しなければ幸いですが」


「なにを。そのへんの貴族達よりもよっぽど弁えておるぞ。


それでだアダム王子、貴国の英雄ハヤト殿を連れてきたということは、何か意味があるのかな?」


「はい、実は先日このハヤト殿と一緒にダイヤモンドのダンジョンに入りました。


その際、珍しいモノを手に入れましたので、陛下とアミル殿下にお土産と思い、持参いたしました。


ハヤト、あれを御前に」


俺は頷くと鞄からダイヤの原石を2つ取り出し、横に取りに来た従事さんに渡す。


相変わらずのポーカーフェイスは崩していないが、手にとってそれを確かめると、明らかな驚きと手の震えを見定めることが出来た。


従事さんはそのまま陛下の元へと移動すると、何かを耳元で囁き、ダイヤを献上する。


「ほう!これは素晴らしい!


爺から聞かねば、これがダイヤだとは信じられまい。


しかもこのサイズのモノを2つも。」


隣で澄ましていたアミル殿下も皇帝陛下の持っそれを覗き込んで驚愕の表情を浮かべている。


「陛下、そのダイヤはダイヤモンドダンジョンの地下32階層から採れたものです。


我が国の経済力を左右するほどの資源であり、我が国にとって最も敬愛するビスマス帝国皇帝陛下にも了承頂きたく、父王と相談の上お持ち致した次第です」


「たしかに、これが大量に採取出来るとなると、この大陸に及ぼす影響は計り知れない。


前もって知らせてくれたこと、感謝する」


皇帝陛下は少しばかり思案顔であったが、ニヤリと口元を緩めると、言葉を続けた。


「これは有り難く頂いておこう。


それでだ、ハヤト殿。


他にもいくつかこれを持っておるか?」


「はい、必要とあらばいくらなりとも」


「ハハハ、このようなものは希少であるから価値がある。


だが、最近の研究では、魔力を蓄積させる媒体として、ダイヤが最も効率が良いと言う説もある。


そうなれば、これほどのモノを大量に採取できると貴国は、莫大な利益を生むのであろうな」


「さすがは陛下。まだ数日前に神王国で発表された新説についてご存知だとは恐れ入りました。」


俺は知らなかったよ。さすがは王族。情報が早いな。


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