俺だけがＶＲＭＭＯ～プレーヤーとＮＰＣ２足の草鞋でお気楽スローライフ～

第46話 皇女アミル

翌日、俺はショウコウさんと共に王城に向かった。

「ショウコウ、ハヤト、呼び出してすまぬな。

この前のダイヤの効果は大きかったよ。

これまで、アダムのことを蔑ろにしておった貴族達の中にもアダムを後継として認める者が出てきおった。

だが、油断は出来ぬ。

そこでじゃ、かねてより計画しておったビスマス帝国の姫を娶り、帝国をアダムの後見にすることじゃが、そろそろ実行しようと思う。

ハヤト、そちにはアダムの護衛としてビスマス帝国への随行を頼みたいのだ。

冒険者ギルドにはこちらから正式に依頼を出しておくが、引き受けてくれるかのぉ」

「はい、承知しました。上手くいくよう、協力させて頂きます」

こうして俺はその１週間後、ビスマス帝国へと行くことになった。

さて話しは少し遡る。

ユカリ達がイベントが発動せずに落胆していた頃、このゲームの運営チームは、予期せぬ事態に混乱していた。

「リーダー！アグニストゥースオンラインでプログラミングされたはずのイベントが回避されました」

「そんなことあり得ないだろう。

イベント開始条件がまだ発動していないだけじゃないのか？」

「いえ、それがシナリオ通り、調査隊が出てます。

本来ならここで堕天使による攻撃があり、調査隊が壊滅することでイベント発動するようになっています」

「そうだな」

「はい、それで調査隊も出発し、堕天使も出現したのですが、どうやら、堕天使がＮＰＣに負けてしまったようです」

「そんな馬鹿な話しは無いぞ！

いや、…まてよ………もしかしたら………、おい、佐藤！今回初採用したＡＩのログを見てみろ！

何か想定外のことが起こるとしたら、あのＡＩがバグってるのかもしれない。

すぐに調べるんだ。」

そして１週間が経ち、ビスマス帝国へと行く日がやってきた。

ビスマス帝国は、この大陸で、１番大きな領土を持っ国で、ビスマス皇帝の元、豊富な経済力により軍備に力を入れ、近隣小国を次々と併合しながら大きく発展してきた国だ。

併合された国々は、ビスマス皇帝が指名した者が統治を行い、自治を任されている。

そのほとんどは元々の王家の者であった。

ようはビスマス皇帝の考え方は、基本的には元の王族のうち、統治能力に長けた者を首長とし、これまで通りの統治をさせるものである。

つまり裏を返せば、王家以外のものが首長になるのは、王家にその素質のある者がいないと判断された場合だ。

こうしたビスマス皇帝による各構成国の首長任命により、ほとんどの国が、これまでよりも平和で豊かな生活を享受しているのだ。

「アミルよ。シャウト王国のアダム王子が、そなたを妻に迎えたいと願いに来るそうだ。

どうする？」

「恐れながら陛下に申し上げます」

「おい、アミル。ここは、わたしとお前の２人だけだ。父で良いぞ」

「では父上、アダム王子は武力よりも商才に長けていると聞き及んでおります。

わたしが嫁ぎましたら、父上がアダム王子の後見となると周辺諸国は見ますでしょう。

これからの時代、武力よりも商才が王の資質として問われると思いますが、また道半ば。

現状は、まだまだ武力を良しとするものが大半です。

シャウト王国の次代は父上の後見により、どのように変わるとお考えでしょうか？」

「よく考えておるものだなアミルよ、

お前の言う通り、今後は経済力を競う時代が来るだろう。

その時には、我が帝国も１度解体し、より経済的に結び付きの強い者同士で統廃合すべきだと思っておる。

その時に、しっかりと舵取りできる者が必要となるのだ。

我が帝国とシャウト王国はかねてより経済的な結び付きが強い。

ならば無駄なモノを統廃合により整理して、１つの経済圏にするのが１番なのだろう。

そうなれば双方の首長を兼ねる王が必要となる。

アミルよ、アダム王子がその器かどうか、お前のその目で確認するのだ。」

「はい父上。ご期待に添えるよう頑張ります」