第19話 秘密部屋へ潜入する

前の主である男爵様も使ったであろう秘密の部屋へと進入していく。


入ってすぐが踊り場になっていて、そのまま下へと続く階段がある。


サーチで見た時に位置関係は把握しているのだが、階段は物置きに囲まれるように地下まで続いていた。


魔導具だろうか、歩き出すと勝手に明かりが灯り、危険なことは無さそうだ。


3階にある書斎から階段を降りきったところは、かなり広いスペースが広がっていた。


庭を含めた敷地いっぱいはありそうな馬鹿でかいワンルームだ。


「これ、綺麗にしたら舞踏会も開けるんじゃないか」


思わず口走ってしまうくらい広かった。


壁沿いに歩いてみる。


いくつかの扉があった。


トイレ、浴室、ベッドルームと順に扉を開けて確かめる。


既に知っていたけど、汚れ具合なんかも確認しておきたいじゃないか。


そこそこホコリは被っているものの、結構綺麗な状態なのは、前の主が几帳面な人だったのだろうか。


10数分も歩いて、ようやく階段の反対側の扉に辿り着いた。


ここはサーチを使ってもよく分からなかった場所だ。


「まさかな」


こんなところにあるはずの無いアレかもしれないと一瞬横切るが、そんな馬鹿なと思い留まる。


扉に手を掛け、取っ手を引くと……


そんな馬鹿な…物がそこにあったのだ。


セーブポイントである。


ちなみにその奥にはダンジョンが広がっていた。






「一応セーブしとくかな」


『セーブして続ける』


を選び、セーブだけしておく。


「ちょっと行ってみよう」


好奇心は猫をも殺すと言われるけど、冒険者なんだからね、ちょっと行きたいですわ。


ってことで、奥へと進む。


ライト魔法で明かりは採れている。


下り坂になっているようで、だんだんと下に降りているな。


はじめは広かった空間もだんだんと細くなり、すぐにいつものダンジョンくらいの幅になった。


天井は少し高いけど、気になる高さじゃ無い。


「サーチ!」


辺りを探ってみると、まだまだ奥まで下りながら続いて居るようだ。


長い一本道を下った先に縦穴があるのが分かった。


どうやら、そこがこの一本道の終着点で、その先は縦穴を降りないと行けないらしいな。


慎重に辺りを探索しながら、横道を探すが見付からないまま、縦穴に着いた。


「さぁ、どうする?」


重力魔法を使えば、安全に降りることは出来るし、風魔法を使って上ることも問題無いだろう。


でも深さが分からない以上、慎重を期すべきだろう。


つまりサーチの探索範囲よりも深いわけだ。


最低でも300メートル近いか。


60階建てのビルくらいあるぞ。


この高さの天井が続くとしても40階層はゆうにありそうなんだけど。


それよりも深いんだから、これまで発見されているダンジョンだとダイヤモンド、もしくは未発見のダンジョンの可能性も高いな。


降りたい気持ちはあるが、短時間で戻って来る自信が無い。


何も言わないでここに来たから、夕食の支度が出来て、呼びに来たマリーさんが大慌てする可能性もあるだろう。


いや間違いないな。


「よし、今は止めておこう」


踵を返して地下室へと戻ることにした。


地下室にあるベッドルームには大きな本棚があった。


「あったよ。あると思ってたんだ」


そう、何故ここに来たのかと言うと、隠し部屋にあろう本棚が目当てだったのだ。


リュックから鉱石や宝石に関する専門書を取り出して、本棚に入れていく。


今日は3分の1だけ。


結構重いし嵩張るからね。


8畳ほどの部屋の壁2面に備え付けてある本棚に種類毎に分類して仕舞うのだ。


「読むのにいちいち上に持って上がるのも億劫だな。


机や椅子なんかも買っておこう」


独り言ちながら、日本語で書かれた専門書やどさくさ紛れに買ってきた?買わされてきた英語やドイツ語、他何語か分からない本を取り出す。


もちろん読めないはずなんだが、俺には勝算があった。


こちらに来てすぐにこちらの文字が読めたんだ。


それなら………


「うん、普通に読めるね。


やっぱり異世界ものの定番である『全世界言語理解』が効いているんだ」


そう、こちらの文字が読めるなら、向こうの外国語も読めるはずだと思ったんだよね。


読みはバッチリだ。


「さぁ、戻って夕食だな」


俺は書斎へと続く階段を登り始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る