第18話 専門書を買ってきた
ショウコウさんからお願いされてルビーのダンジョンから採掘される鉱石や宝石の加工についてプロデュースすることになった。
さてどうするか....うん、向こうで調べよう。
翌日、商工ギルドを訪ねて、採掘された鉱石や宝石のサンプルを見せてもらう。
金、銀、銅、アルミやコバルト、ニッケル等々鉱石だけでも結構な数があるな。
宝石に至っては、メジャーなものは大抵あるし、名前すら聞いたことのないモノばかりで目が回りそう。
とりあえず鑑定結果で出てきた全ての情報を書き出して、向こうの世界に持って行こう。
書き出した紙の束を持って教会へ。
NPCから見たら何でもない石柱の前でお祈りすると、そのままセーブされて現実の世界へと戻ってきた。
ネットを使って一つ一つ鉱石を調べていくのもありだが、纏めるのが大変そうだ。
「この時間ならまだ本屋が開いてるな」
俺は2駅離れたターミナル駅駅ビルに入っている超大型書店へと向かう。
確か様々な専門書が並んでたはずだ。
「うーーん、多い。どれを選べば良いのやら」
鉱石や宝石の専門書のあまりの多さに途方にくれていると、ササッと近寄ってくる人影が。
「どのような書籍をお探しでしょうか?」
この専門書売り場の店員さんだった。
そうそうハプニングなど起こるはずも無かった。
「宝石や鉱石の加工をやりたいなと思って会社を起こしたのですが、それに重宝する専門書はありませんか。
あっ、外国に行く予定なので、ひと通り頂きたいのですが」
店員さんの目がキラリと光ったような気がする。
「こちらにお掛けください。
見繕って来ますので。
宮本さん、こちらのお客様にお茶をご用意して下さい」
a few minutes later…
「これとこれが鉱石の種類と説明がよくまとまっております。
それとこっちが宝石ですね。
デザイン的なものは鉱石の硬さに依存しますので、具体的に製法が書かれているこちらが良いかと。
それとこちらは指輪やイヤリングなどアクセサリの流行りを年代別に整理したものです。
とりあえずこれくらいでしょうか」
案内されて座った席の机の上に、あっという間に10冊ほどの専門書が目の前に積み上げられた。
そしてそのタイミングで紅茶と洋菓子が出てくる。
思いっ切りカモになってるよ。
まぁ要るもんだし。
勧められるままに紅茶と洋菓子を食べていると、裏返された小さな紙が1枚。
恐る恐る表に返してみると、3ヶ月分の手取り給与と同じくらいの金額が書かれていた。
お会計はリボ払いでお願いします………
しかし専門書って高えよ。
明日から仕事頑張らなきゃな。
翌日の月曜日からはいつもの通り会社へ出社する。
満員電車の揺れがやけに懐かしい。
アッチの世界に結構な時間居たから感覚的にはしばらくぶりの通勤になるのだが、実際の時間経過は全く無いのであるから、そのズレの幅が大きく、変な気持ちだ。
それでも、会社に着く頃にはいつもの感覚が戻って来て、現実の社畜生活が始まった。
今日も早めに帰宅してゲーム世界へと戻る予定。
そのために、いつもの倍のペースで仕事を頑張る。
そして、満員電車に揺られての定時帰宅。
帰り道思った。どうせ時間経過が無いのだから、ゆっくり仕事をしても良かったのでは…と。
「いや、頑張って仕事を終えた爽快感がアッチの世界での活力になるのだよ」
思わず電車の中で声に出してしまった。
冷めた目で見られるかと焦ったが、誰もこっちを見てくれていない。
危ない子になったようだ…
最寄りの駅前で簡単に晩飯を済ませて家へと戻る。
スーツを脱いだら、アッチから持って帰ってきたリュックに専門書を入れてゲームの電源をオン。
最新の現実モードをロードする。
浮くような感覚にも慣れたね。
次の瞬間、教会の何でもない石柱に祈っていた。
屋敷に戻って空いている部屋を書斎にする。
サーチ魔法で隠し部屋のある部屋を見つけておいたからそこを選んだ。
しばらく籠もるとセバスさんに告げて、新しい書斎に入る。
「隠し部屋の入り口はっと。
あった、この紐を引くんだな」
窓の飾りに見える紐を引くと、分厚い本棚がスゥ~と動く。
どんな部屋になってるのか楽しみだ。
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