第20話 秘密部屋のダンジョン1
書斎へと戻ると、ちょうど扉を叩く音が響く。
「旦那様、夕食のご用意が出来ております」
「ああ、すぐに行くよ」
隠し部屋への通路を閉じて、食堂へと向かう。
こちらの食事事情はというと、まぁそれなりってとこかな。
貴族様の屋敷で出される料理が田舎の家庭料理程度なら、一般の人達は何を食っているのか。
実は肉中心である。
ダンジョンから採れるのは主に魔物肉。
全ての魔物を食べられるわけじゃ無いけど、それなりに種類はある。
肉屋からの依頼で冒険者が採ってきたり、肉屋自体が採取部隊を持っているところもあるみたいだね。
ゲームの中ではNPCの食事事情なんて考えもしないから、全然知らなかったけど。
この街はダンジョンがたくさんあるから、魔物肉も豊富に採れるんだ。
だからこの街では肉を焼いた物が多い。
その他は冒険者御用達の干し肉に、血を少しだけ入れた肉の煮物。
塩、コショウが無いから、動物の血が塩分替わりみたいだね。
臓物は使わない。
だって鮮度の問題があるし。
我が家でもご多分に漏れず、ジビエ料理が中心。
さすがに魔物肉はほとんど出てこない。
動物の肉は、魔物の肉に比べて少し高価だ。
わざわざ動物を取りに行かなくても、冒険者達が競って魔物肉を採ってくるから、市場には魔物肉が大量に流れてくる。
当然安くなるのだ。
逆に、わざわざ動物を狩る必要も無いから、動物の肉が高級品になってしまうのはしようが無い良ね。
だから貴族様や大商人達は基本的に動物の肉を食す。
動物を狩らなきゃ作物が荒らされるだろうって?
もちろん、冒険者への依頼にはそんなのもあるけど、あまり人気が無いんだ。
だってダンジョンの中じゃ、しょっちゅう魔物に出くわすけど、山に入って動物を見つけるのは大変だもの。
どちらの依頼を受けるかは明白ってもんだ。
「今日は、鹿の腹側を焼いてみました。
脂が乗ってて美味しいと思います。」
「うん、ありがとう。美味しそうだ。
頂きます」
手を合わせて鹿のステーキを頂く。
味が薄いよ。
俺は持ってきた塩・コショウを振り掛けてみる。
美味い!美味いんだけど、この量は胸焼けするよ。
付け合わせの野菜は…
わずかにサラダが置かれている。
それも何も掛かってないやつ。
この葉の色形、これ絶対苦いやつ。
少しだけ摘んでみたけど、やっぱり苦かった。
「マリーさん、他に野菜って無いのかな」
「野菜?ですか」
「そうこれなんか野菜だよね?」
「それは口直しの草ですが。
それを野菜と呼ぶのですか?」
なるほど、わかったよ。
そういえば、畑に生っているものはほとんどが小麦だった。
野菜は作って無いというか、概念が無いみたいだ。
今度野菜の種を持ってきて、庭に畑を作ろう。
食後、料理長を呼んで、塩・コショウを渡しておく。
今度からは使ってね。
夕食を食べ終えて風呂に入り、書斎に入る。
「さぁ、冒険だ!」
ダンジョンへの扉を開けて後ろ手に閉める。
セーブポイントで『セーブして続ける』を選択。
長い下り坂を真っすぐに進む。
「さぁてと、中へ入るとするか」
重力魔法を使い身体を少しだけ浮かせると、そのまま穴の上まで歩く。
少しづつ重力を掛けていくと、徐々に身体が降下していく。
「こんなもんかな」
落下速度に気を付けながら重力操作していると、ちょうど良い具合の落下速度に。
明かりの塊がちょうど着いてこれるくらいの速度を維持すると、同じ明るさのまま降下しているのがよく分かる。
穴の壁は粘土質の少し黒い土に覆われているようだ。
いくつかの地層が重なっており、地下水がちょろちょろと流れ出ているところもある。
しばらく降りると、壁面に横穴を発見。
じゅうぶん人が立って通れそうなくらいの大きな横穴が開いている。
そのまま下に降下を続けると、同じような穴がいくつも開いていた。
そして数分後、地面が見えてきた。
落下速度を緩めふわりと地面に着地する。
落下速度から考えて、おおよそ地下600メートルくらいかな。
「息も苦しくないし、わずかに風を感じることも出来る。
サーチ!………は、うーーん、いくつかの部屋は見えるけど、生き物の気配は感じられないな。
一応、ここから分かる範囲だけでも地図を描いておこう」
とりあえず、ここはこれまでにして、上に上ってみる。
重力を操作して入口近くまで上昇すると、横穴が見えてきた。
恐らくこれが一番上にある横穴だろう。
「少し入ってみるかな」
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