第16話 マリーさんにせまられました

冒険者ギルドでギルマスのボウケンさんとお話し中。


「なるほど、なるほど。


よく1時間でこんな詳細な地図を書けたな。


それも3階層まで」


「一応出現する魔物も一覧にしておきました。


だいたいルビーのダンジョンの8階層くらいまでですね」


「そこまで分かるのか。


もしかして、サーチでも持っているのか?」


「はい。サーチでずるしちゃいました。


やっぱり地道に調べなきゃ駄目ですか?」


「いや、どちらかと言うとサーチの方が良いぞ。


漏れも無いし、魔物の種類もはっきりするしな。


だが、サーチ魔法を持っている奴が極端に少ないんだよ。


まぁ、斥候職の奴らなら一応は持っているが、範囲が狭く、精々罠を見付けられる程度なんだ。


だから、この精度で地図を描けるやつなんか、この街ではお前ぐらいじゃないか?」


「そうなんですね。じゃあ、しばらくは探索しながら地図作りをしていきますよ」


「ああ、頼んだぞ。

よし、地図作りをギルドからの依頼にしてやろう。


1階層あたり、このくらいでどうだ?


もちろん深くなれば深くなるほど値段を上げてやる」


「ありがとうございます。頑張って地図を作りますよ」


「あっ、それと地図の話しは他のギルドには内緒にしておいてくれよ」


あっコイツ、他のギルドに高く売つけるつもりだな。


まぁ、俺としてはついでだから、どっちでも良いけどね。


「じゃあ、とりあえず今日は帰ります。


明日から本格的に潜りますね」


「おおう、しっかり英気をを養ってくれよ。じゃあな」


ニコニコ顔のボウケンさんに見送られてギルドを出る。


大通りを貴族街に向かって10分くらい歩いて屋敷に着いた。


「ただいま~」


扉を開けて中に入ると、セバスさん筆頭にメイドの皆さんが並んで待っていてくれる。


素晴らしい光景だね…っつか、何故帰って来たのを知ってるよ?


「「「お帰りなさいませ旦那様」」」


まぁセバスさんだから良しとするか。


自室に戻ると、メイド長さんが脱いだ服をキチンとハンガーに掛けて、部屋着を掛けてくれる。


おお!貴族様になったみたいだぞ。


「マリーさん、ありがとう」


とっさにメイド長に向かってマリーさんと呼び掛けてしまった。


俺の中では、メイド長の名前はマリーさんしか出てこなかったんだよ。


「旦那様、お風呂の準備も出来ております。

ご案内致しましょうか?」


「お願いするよ」


メイド長のマリーさんに導かれて風呂場へと移動する。


途中、他のメイドさんが「マリーさん」って名前を呼んでたよ。


何回見ても不思議なもんだ。


風呂にしっかりと浸かってのんびりとする。


向こうの世界で結構移動して疲れてたけど、こっちでは肉体的な疲れは無くなっている。


まぁ意識は繋がってるから、精神的な疲れは残るんだろうけどね。




ふかふかのベッドで心地よい睡眠を堪能した翌朝、鳥の鳴き声で目覚める。


街中なのに屋敷の敷地が広いからか、結構な鳥や小動物が住み着いているみたいで、昨日庭を散策してたら結構目についたよ。


いやあ、優雅な暮らしだねぇ。


服を着替えているとマリーさんが起こしに来てくれた。


昨日マリーさんの名前を付けてから、急にマリーさんの態度が軟化したような...


いや、元々厳しかったわけじゃないんだけど、なんとなく隙間があったというか。


でも、その隙間が取れて妙に近くなった感じがする。


お風呂に入ろうとしたら昨日のメイドさんじゃなくてマリーさんがいたし、妙に艶っぽい視線を感じたし。


そういえばショウコウさんの時もボウケンさんの時も名前を付けたら、急にフランクになったような、そうでもないような。


まあ、名前で呼ばれる方が親近感が湧くし...きっとそうなんだよ。


こちらで過ごす時間は向こうの世界の時間が止まっているから、いつまでこっちにいても問題ないのだから、しばらくこっちの世界を楽しもうかな。



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