第15話 時間はやっぱり0でした

現実世界に戻って来て真っ先に時計を見る。


「うん、時間経過してないね」


ここまでは予定通り。


アッチでは腹が空いてたけど、こっちに戻って来たら、そんなでも無かった。


なんか変な気分だ。


どうやらこっちはこっちでアッチはアッチみたいだぞ。


「そうだ!向こうで食べる非常食を買いに行っとくか」


近くのディスカウントスーパーへ買い物に行く。


目当ては乾燥袋麺。普通はお湯で煮る必要があるが、最近は麺を入れて熱湯を注ぐだけで出来るラーメンどんぶりがあるんだよ。


前に面白そうだったので買ってある。


これひとつと袋麺をいくつか持っておけばダンジョン内でも温かい食事にありつけるよな。


袋麺はいろんな種類を箱買いしておく。もちろんラーメンだけじゃなくてうどんやそば、乾燥ご飯もね。


後はゼリータイプの栄養補助食品。そして必要なのが空のペットボトル。


飲み水自体は魔法で出せるんだけど、溜めておくために必要だ。


この前ルビーを攻略した際は、てのひらに水を出して飲んだんだけど、すごく不便だった。


手が汚れてたら先に洗わなきゃいけないし、なにより、1回に溜められる量が少なくて飲むのに時間も魔力も必要だったんだ。


そうそう、魔法についてなんだけど、ジョウイチの時は雷魔法と水魔法くらいしか使えなかったんだけど、レベルが大量に上がったことと、NPCハヤトになったことで、プレーヤーとしての職種属性縛りが無くなったみたいで、全属性の魔法が使えるようになっている。


NPC最強だよな。





大量の荷物を持ってタクシーで帰宅。勿体ないけど、あの量は持って帰れない。

主に袋麺の箱だから、軽いけどかさばるんだよな。


部屋に入ってアウトドア用の丈夫なリュックに適当に袋麺や他に買ったものを入れていく。


とりあえずは10食分。大体3日分だな。


その他、ラーメンどんぶりやペットボトル、アルミ製のブランケットとかキャンプに必要なものを詰めていく。


「ふーー、こんなもんかな。時間は...おっ、もう19時か。戻ってきてからおよそ6時間。そろそろアッチに戻るかな」


装備を再確認して、ゲーム機の電源を入れる。


6時間前にセーブしたばかりの ”現” の文字が入った項目を選んでロードする。


いつもの不思議な感覚に包まれて着いたのは、ダイヤモンドのダンジョン3階層のセーブポイントだ。


ちなみにこのセーブポイント、他のNPCからはダンジョンにある遺物か何かの石碑に見えているらしい。


サーチ魔法で、ダンジョン内を捜索。通路や隠し部屋なんかを紙にさっさと書き写しておく。


そして収納魔法で亜空間を作って、リックやら日本から持ってきた荷物を入れた。


「そろそろ屋敷に戻ろうかな」


時間はむこうでの滞在時間6時間とここでの滞在時間およそ1時間経過したはずだ。

入口まで戻ってみる。


ちなみに3階層目までは雑魚ばかりだったから何の苦労も無かった。


出てくる魔物はルビーで言えば8階層目あたりまでの奴らかな。


入口で時間を確認する。経過したのは...うん、1時間ちょっとだね。


やっぱり向こうに行っている時間も0になっているみたいだ。


想像通りで良かったよ。


ダンジョンを出ると先程とほとんど変わらない風景。だって1時間しか経ってないしね。


「ハヤト、早かったな」


「はい、今日は下見だけでしたので、それでも3階層までは地図を作ってきましたよ」


「さすが早いな。冒険者ギルドのボウケンにでもわたしておいたらいい」


「了解でーーーす。じゃあ戻ります」


冒険者ギルドへ向かう。うん?ボウケンさん?だれ?


「あのー、ボウケンさん居られますか?」


「ボウケンさん、ボウケンさん、ああ、ギルマスね!上の部屋におられるわ。」


「ありがとう、ちょっと行ってみます」


冒険者ギルドのギルマスがボウケンさん?


もしかして商工ギルドのギルマスにショウコウさんって名付けたから、冒険者ギルドのギルマスがボウケンさんって、勝手に名前が付けられたの?


俺は付けてないよ!




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