第12話 商工ギルドに登録しよう

ローズのダンジョンに関する契約を終えた俺は、商工ギルドのギルマスに連れられて市街地へと向かう。


何故か後ろからぞろぞろとついてくるんだけど。


例えば冒険所ギルドのギルマスとか、受付嬢とか、その他もろもろ。


個人情報もへったくれも無いよね。


貴族街のすぐ近くまで移動したところで商工ギルドのギルマス...ええーい長いからショウコウさん(仮)でいいや。


なんせ、NPCだから元から名前なんて付いてないんだよな。


いや、厳密にはゲームのストーリーに関係してくる人には名前があるのだ。


俺の装備を作ってくれた鍛冶屋のダグラスさんとかね。


彼も終盤に勇者の武器を作ることになるから名前が付いているだけで、今は未だプレーヤーから見たら無名のボブなんだけど。


「ハヤト君、着いたよ。ここでどうかね」


「ええっ!ここ?こんな大きな家ですか?」


「おいおい、最低でもこのくらいは必要だぞ。


お前さん、もうすぐ途轍もない金持ちになるからな。


警備面も考えとかないとな」


「うっ………」


そうだった、鉱石の採掘量の3%も入ってくるんだった………


「ここなら貴族街にも近いから警備もしっかりしてるし、周りも貴族御用達の大店ばかりだから、そこいらに用心棒も居るからな。


滅多なことで悪い奴らは来ないぞ。」


「は、はい、わ、分かりました。


ここに住ませて貰います」


「よし、それでいい。


じゃあ、商工ギルドにも登録してもらおう」


「ええっ、商工ギルドにですか?」


「そうだ。これから膨大な金が入ってくるんだから、当然その使い道が必要だぞ。


そうしなきゃこの街から現金が減ってしまうからな。


適度に市井に回さないと拙いぞ。


だから、商工ギルドに入って、会員に資金貸出でもしてくれると助かる。


もちろん自分で商売を始めてもいいぞ」


「ちょっと自分では…」


「そうだろうな。お前さんにはダイヤモンドも攻略してもらわなきゃならねぇからな。


とりあえず商工ギルドへ行くぞ」


商工ギルドギルマスのショウコウさん(仮)に連れられて隣の建物へ。


「さぁ着いたぞ」


俺の家の隣は………商工ギルドだった。


「おい、商工ギルドに入っても良いけど、お前はファンタス1の冒険者なんだからな。


冒険者ギルドにも忘れずに来るんだぞ!


絶対忘れるなよ!」


さすがに冒険者ギルドのメンバーが商工ギルドの中まで入るのは拙いから、ギルマスや受付嬢はブツブツ言いながら帰っていった。


商工ギルドは貴族や大商人も多く所属しているためか、豪奢な造りになっている。


日本で言うと、大正や昭和初期に造られたデパートや銀行みたいな豪奢な大理石造りの建物が似てるかな。


汗と酒の匂いがキツい冒険者ギルドと違って、なんか良い匂いがするみたいな。


古き良き純喫茶みたいなソファーが並んでいるのは恐らく一般の商談席だろうな。


奥の方にはシャンデリアが見えるから、あちらを貴族とかが商談に使うんだろう。


「行くぞ」


受付に声を掛けたショウコウさん(仮)が俺を奥へと誘う。


「ここでじゃないんですか?」


「うん?どうしてここだと思うんだ?」


「だってここが一般の商談席ですよね。


奥はシャンデリアがあるから、貴族様用ですよね」


「どうしてここが一般の席だと思った?」


「だって、席が少し硬そうですもん。

あんまり長居しないように硬めなんですよね」


「.....どうしてそう思うんだ?」


「そもそもの目的なんて俺には分かりませんが、硬い椅子だと長々と寛ぐことなんて出来ません。きびきびとした商談になるでしょうね。


俺がギルマスなら、若くて駆け出しの商人達が寛いでいる姿を貴族や大商人に見せたくないです。


見下される彼らが可哀そうですから。


同時に商談を行う客の方にもランク付けすると思います。


客が駆け出しなら、次は奥で商談したいと思うでしょうし、そうなれば商談の質も上がると思いますので。」


「なるほどな。お前さん、商人になったらどうだ。そこまで冷静に考えられるのであれば充分大商人になれるぞ」


「うー--ん、ダイヤモンドを踏破したら考えます。」


「そうだな、その時を楽しみにしておこう。


とりあえず、商工ギルドに登録しておくぞ」



というわけで、俺は冒険者ギルドと商工ギルドの2足の草鞋を履くことになったんだ。

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