第10話 攻略しちゃいました

ルビーのダンジョン最下層地下25階。


向かうはラス2ボスのいる廻廊。


おっと現れた!


三ツ首のマジカルウルフ。


器用に3つの首から同時に魔法を放つのだ。


前回来た時は這々の体で逃げ回り、アイツの魔力が枯渇した時にヤったっけ。


前回と比べて、今は装備も武器も段違いに良くなっている。


ゲームモードで感じていたタイムラグも全く無い。


器用に3つの首を振り回しす三つ首マジカルウルフ。


それぞれの頭の上には魔方陣が展開されている。


来る!


炎と雷、そして俺を囲うように氷の3つの中級魔法が俺に襲いかかる。


逃げないし防御もしない。


防具の防御力をあてにして、真っ直ぐに敵に突っ込んでいく。


ズバッ!!


目の前に流れる炎を僅差で躱しながら長剣を一閃。


振り切った状態から横に跳ぶ。


ボタッ!ボタボタッ!ドサッ!!


同時に3つの首が落ち、大きな音をさせて巨体が倒れた。


「すっ、凄えーー!」


自分でも信じられないような剣技であれだけ手こずらされたラス2ボスを瞬時に斃すことが出来た。


おっと、ゆっくりしている暇はないぞ。


すぐに装備を確認する。


掠った程度だが、炎と、雷が当たってたはずだ。


ボス戦に突入する前の数十秒間に、しっかりと点検するが、どこにも異常は無さそうだ。

長剣に刃毀れも見当たらない。


「ボス戦、大丈夫そうだな」


ホッとひと息ついたところで足元に魔方陣が現れる。


「よし!大丈夫だ。俺はやれる」


ひとりで気合を入れ直した。




「凄えなハヤト!あのルビーのダンジョンをソロで攻略したってか!


しかも初だぜ。


今日はお祝いだーー!!」


しっかりとハヤトの名で認識されていた。


昔からそうだったようにごく自然に。


ハヤトになる時に少し容姿も変更しといたんだけど、それも含めて受け入れられているようだ。


ちなみにハヤトのプロフィールは、身長175cm、体重70kg、年齢は17歳で金髪のイケメンって感じ。流れの冒険者で詳細は不明にしてある。


えっ、ボス戦はどうしたって?


もちろん勝ったよ。


さすがに瞬殺とはいかなかったけど、魔法を長剣にエンチャントして魔法剣で戦ったら、結構あっさりだったな。


ボスが落としていったのは『瞬足のブーツ』


速く走れるだけでなく、水の上や、空中も走れる超レアアイテムだ。


その『瞬足のブーツ』と攻略談議を肴にNPC達とギルド直営の酒場で宴会中なんだ。


「ハヤト、俺達のパーティに入ってくれよ」


「いや、俺の方が先に声を掛けてた!抜け駆けするんじゃねぇよ!」


「俺んとこだったら、言い値で報酬を出すぜ」


「だ、か、ら!抜け駆けすんなって!」


俺のテーブルの周りはこの街の有力パーティのリーダーばかり集まって俺の争奪戦が始まってる。


「こらこら!テメェら、ハヤトが困ってるだろ!


そんな話よりも今は素直に我が町の英雄を褒め称えてやろうじゃないか!」


リーダーを押し分けて横にやって来たギルドマスターが一喝すると、ざわついていた奴らが大人しく席に着いた。


「五月蝿くてすまんな。


こいつらも悪気は無いんだぜ。


何十年も攻略出来なかったルビーのダンジョンを攻略、いやソロで攻略したお前を尊敬してるんだよ。


この荒くれ者達がだよ!


それだけの偉業をお前さんはやり遂げたんだ。


俺は嬉しくってよお………オオウウッ…」


泣き始めたギルドマスターにその場に居た全員が湿っぽくなる。


後から聞いた話だが、ギルマスはこのルビーのダンジョンを攻略するために冒険者人生のほとんどをつぎ込んだらしい。


おいおい、そんなNPCの裏話、どのゲームサイトにも載ってねえよ。


そして3日後、ようやく開放された俺は、教会のセーブポイントでセーブして、自室に戻ってきたのだった。


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