第9話 地下25階層に到達したよ

さすがは竜皮の全身鎧。最初にウルフに噛みつかれた後も結構噛まれたけど全然平気。


長剣の切れ味も抜群だ。ハンターウルフの毛皮は脂分が強くって中途半端な剣技じゃ滑ってしまって切れやしない。


だからしっかりと斬らなきゃならないんだけど、これだけの数がいっぺんに攻めてきたら至難の業だよ。


だから斬っても斬ってもなかなか数が減らないんだ。


前回ソロで入った時も、ポーションをがぶ飲みしてほとんどのウルフを魔法で斃したんだから。


それがこの長剣だと、スパッと斬れちゃう。


滑らずスーーっとウルフの体内に入って行っちゃうみたいな。


だから、今回はあっという間にモンスターハウスを制圧しちゃった。


とっとと、『求婚の花弁』を採取して開いている隠し扉から21階層に降りる。


21階層からはマジカルウルフとの遭遇がやたらと多くなるんだが、この鎧さえあればマジカルウルフの魔法ぐらいへっちゃらさ。


ほとんどダメージを受けないしね。一応現実モードでも、見たいと思えば目の前にステータス画面が現れる。


だから、実際に受けたダメージや残りHPも見れるんだけど、ほとんど無傷だな。


そして、攻撃力と防御力は大幅に増えてるし、魔法耐性も強くなっているね。


ダンジョンに入ってからわずか2時間ほどで最下層の地下25階に辿り着いた。


ここにはセーブポイントがあるはずだ。


前回ここまで来た時は、セーブポイントに辿り着く前にラス2ボスに当たってしまい、結局セーブできずにそのままボス部屋へ行っちゃった。


今回は、ラス2ボスに当たる前にセーブしておこう。


前回ラス2ボスに当たった場所を回避して慎重に進む。


そして20分後、このダンジョン最後のセーブポイントを見つけた。


セーブっと。


セーブポイントが光り輝き、目の前に選択肢が現れた。


1、保存して旅を続ける


2、保存して元の世界に戻る


3、保存しないで元の世界に戻る


今回は2を選択し、一旦元の世界へ戻ることに。


だって死んじゃったら怖いし。


2を選んでポチっと。


すうーーっと浮き上がるような感覚があって自分の部屋に戻ってきた。


今は午後4時過ぎ。


ちょっと早いけど晩御飯を食べて次どうするかを考えよう。


家の近くにある牛丼屋で大盛とみそ汁を頼む。


顔馴染みの店員がちらっとこちらを見てちょっとだけ笑み。


このくらいの距離感が好きだな。


自室に戻ってゲーム機の前に座る。


さて、どうしようか?


現実モードで入ってボス戦に挑みたいのはやまやまだ。


そりゃ、もし現実モードで死んだ場合にどうなるのかとか、かなり心配だけど、正規のゲームモードじゃこのファンタス街で絶対手に入らない強力な武器と防具を持っているし、負ける気がしないんだよな。


この後、現実モードで入ってボス戦するのは決定事項として、今考えているのはジョウイチのままボス戦に入るかどうかだ。


このルビーのダンジョン。一応公式にはまだ攻略者がいないことになっている。


ということは、俺が攻略しちゃうと、ジョウイチがソロで攻略してしまったことになってしまう。


そうなると結構厄介かも。


かといって、パーティの皆んなを誘って挑んだとして、俺と皆んなの戦力差が大きすぎるような気がする。


皆んなからはただの長剣と軽鎧しか装備していないように見えているのに、急にそんなに強くなったらおかしいでしょ。


それに皆んなに無理をさせてもって思う。


いっそ名前を変えてみようか。突然現れた謎の冒険者が颯爽とルビーのダンジョンを攻略した...なんてかっこいいよね。


そんなことを考えながらゲーム機を弄っていると、ありました、ありましたとも、現実モードとゲームモードで別々の名前が設定できるようだ。


これなら、ゲームモードはあくまでジョウイチで、現実モードは謎の冒険者....ハヤトにでもしておこう。


早速名前をハヤトに変更してロード、俺は現実モード地下25階のセーブポイントへ移動したのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る