第5話 地下20階へ降りよう
「さぁ地下20階へ行こうじゃないか」
「そうね。サクッと進みましょうよ」
いつものように、リーダー格の戦士ハルオミと盗賊のユカリが先導する形で動き出す。
「ちょっと待って。
俺さ、20階の地図を作ったんだよね」
地図を取り出そうとして、ハッとなる。
地図とか自分が作った物はゲーム上のデータじゃないから、ゲームのファイル共有機能を使ってシェアする必要があるんだけど、アレってコントローラーから操作するんだ。
今の俺はアバターと一緒にダンジョンに潜ってるよね。
どうやって操作するんだ?
「いつの間にそんなもん作ったんだよぉ。
早く見せてくれ」
どうすればいいのか悩んでいると待ち切れなくなったのか、ハルオミが催促してくる。
ええい、ままよ。
手持ちのカバンに手を掛けると、目の前にインベントリ画面が現れる。
そしてそこにはアップロード&公開ボタンがあった。
「おおっ!凄えじゃん。詳細まで調べてあるし」
無事にシェア出来たみたいでホッとする。
どうやらこのカバンと画面上のインベントリが連動して、操作できるみたいだな。
ちなみに、俺の目の前に現れた画面は、皆んなには見えなかったみたいだ。
「ジョウイチさん。
この地図に地下21階への階段がないですよ?」
冷静な司令官ポジションの賢者ユキヒコが問い掛けてきた。
「そうなんだよ、階段は無かった。
その代わり、とある部屋を抜けると、地下21階へワープするようになってるんだけど…」
「「「とある部屋?」」」
「そう、とある部屋。
皆んな、『求婚の花弁』って聞いたことない?」
「わたし知ってる」
「わたしも」
「さすが女子は食い付いてくるね。
その『求婚の花弁』がある部屋を通り抜けるんだ」
「きゃあ、わたし欲しい!」
「わたしも!」
ユカリと聖女マリアがキャッキャ騒ぎ出す。
やっぱり女子だね。
「けどってことはその部屋に何か問題が、あるのかな」
「ユキヒコ、実はそうなんだ。
この部屋、確かに『求婚の花弁』があるんだけど、実はモンスターハウスなんだ」
「「「………」」」
「でも、その部屋がモンスターハウスだって知ってると言うことは、ジョウイチは入ったんだよね。
それで無事に21階へと辿り着いた。
そうだね?」
「ああ、危なかったけどね。
だけど問題はそっからなんだよ。
地下21階から最下層の25階まではセーブポイントが無いんだ。
そして、そのセーブポイントは使えないんだよね。
セーブポイントの前でラス2ボスを斃したら、セーブする前に強制的にボス部屋に送られるんだ」
「「「ええっーー!」」」
ほら、この反応。
これを期待してたんだよね。
「それを知ってるってことは、お前、ひとりでボス部屋まで行ったのかよ!」
いや、驚くとこそこなの?
まぁ、たしかに最下層までソロで行ったんだから、大層なことなんだけどね。
「そ、そうだね。
モンスターハウスを突破した勢いで、そのまま行っちゃった」
「そ、それで、ボスとの一戦は?」
ハルオミの食いつきが凄えーよ。
「ボスとの戦闘はやって無い。
余りにも急で焦ってたから、ポーズにしたまま、コンビニにいった。
そしたら、あの事件に巻き込まれて…
翌日家に戻ったら、ゲームがリセットされてたんだ」
「「「………………」」」
「そ、それは災難だったね。折角モンスターハウスも突破してラス2ボスも斃したのに…」
ユキヒコが慰めてくれる。
「…あ、ありがとう。
あっ、それで、さっきサクッとモンスターハウスを避けてマップを作って来たんだよね」
きっとモニターの前の皆んなは、同情してくれてると思う。目の前のアバターは相変わらず無表情だけど。
「と、ともかくだな、折角ジョウイチが描いてくれた地図があるんだから、サクッと20階を回ってみないか。
もしかしたら何かジュウイチが見落としたものがあるかもしれないし」
「そうですね、ここにいても…ですから」
ハルオミのアバターが先頭で歩き出すと、他のアバターもそれに続く。
俺も不自然にならないように、いつもの位置で歩き出したのだった。
「うーーん、地図の通りだね」
「そうですね」
「やっぱりジョウイチの地図は精度が高かったな」
俺達は今、モンスターハウスの前にいる。ひと通りまわってみたんだけど、地図以上でも以下でも無かった。
「行く?」
「行くって、モンスターハウスの中へ?」
「そう、他に行くところも無かったじゃん」
「そうですね、ジョウイチがソロで大丈夫だったんだから、とりあえず入って見るのもありですよね」
「で、でも、ちょっと待って!
ここに入ったら地下21階へ無条件に行くことになるんだよね。
それでそこからはセーブ出来ないまま、ボス戦だよね。
ちょっと無理がないかなぁ」
「そ、そうよ。今の装備と食糧じゃ、絶対足りないわ。
一回戻って、準備してからにしようよ」
ユカリとマリアのふたりが、モンスターハウスへの入室を止めようとしている。
「俺もユカリやマリアに賛成かな。
俺もかなり大変だったし、何度も死にかけたし」
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