あの小川がまさか・・・。
エンデリンの森の入り口から少し入るとあっという間に木々が覆い茂る、多種多様な植物が天地を埋め尽くすもはやジャングルとも言えるような環境となる。
一応人の往来は有る為、人の背丈までに伸びた草木の間を縫うように一筋の獣道が出来ており、それが森の奥へ奥へと続いている。
魔女にお菓子の家へ手招きされているような感覚に陥りながら私たちは獣道に沿って森の奥に進んで行く。
「キャスカ、今日は何処まで行くの?
「ん、そうだ。大岩の奥を右手に行くと小さい池があるんだよ。その池から流れ出る小川を少し下っていくんだ。」
キャスカは羊皮紙で出来た地図を腰のポーチから取り出し、今の大体の地点を指差しながら見当を付ける。
私はキャスカの元に歩み寄ってその地図を肩越しから覗き込むと、キャスカが口にしていた池と小川に小さく赤い丸で印が描かれていた。
「帰りはどうするの?そのまま小川を下っていくの?」
「そうなるな。この小川、結構曲がりくねってはいるが最終的に町の傍の川に流れ込むんだよ。」
「川って、あそこ?ムニカ川?森から流れ出てるのって小レルム川だけじゃないの?」
「それが違うんだ。しかも取水堰の近くの小川がこれだよ。途中、水無川になったりして途切れてるので直接繋がっているわけではないけど。」
小レルム川は私がさっき言った通り、森から流れ出る既知の川で上流は火山地帯から流れ出る毒水を含む、そして森で浄化された水が流れ出るあの川。
小レルム川は川筋に沿ってずっと流れが続いているので、森の中を通り過ぎ火山地帯へ到達しているという事は周知の事実ではあった。
だがキャスカの言う通り、森から流れ出る川が途中流れを隠しながらでもまだあるとしたら森の秘密の解明が更に進む事になる。とんでもない大発見だ。
「ええ?あの川がそうなの?でもキャスカ、よくそんな事が判ったわね?」
キャスカは私に褒められてとても嬉しく誇らしいのか、えへへと人差し指で鼻の下を擦りながら口角を上げる。
「前に不審に思ったんだよ。断崖の際にあるわけでもなし、山から近いわけでもなし、川が近いわけでもなし。それなのに周りに何もない所から水が湧いてる。それでもしかしたらと思って地図なりなんなりで調べてみたら案の定、というわけだ。」
「へえー、それって他の人たちは知ってるの?」
「いんや、まだ誰にも言ってない。そもそもまだ証拠がないからな。今回の探検でその見当を付けられればとは思ってる。」
「どうやって?」
「池とそこから流れ出る小川、それに件の川、それぞれサンプルを採取して成分を分析する。その成分が似通っていれば同じ川だという証左になる。」
「なるほどねえ。」
「まあまずはサンプル収集しないとな。さあ行くぞ!森の奥まで!」
キャスカはやる気に満ちた表情でずいずいと森の奥へ進んでいく。
軽くはない荷物を背負いひいひいと息を上げる私達を横目に見ながら。
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