森の探検!
探検の前にまずやる事。なかなおり。
六日後。今日は探検の当日。
私、リエラとキャスカは今日探検に入るエンデリンの森の入り口の眼の前にいる。
エンデリンの森は水源として有名で、この森から流れ出る水が農業用水として周辺の農地を潤している。
この森の最も不思議な点は、この森から湧き出る水源以外のこの森の上流にある火山地帯から流れ出る毒水(酸性値が高く、硫黄成分も豊富に含まれている農業または飲用、漁業にすら適さない完全なる毒)すらこの森を通過する頃には毒水では無くなり、農業にも使えるほどの清浄な水に浄化されるという事。
毒を浄化するという事は、毒を浄化する何かがある、もしくは毒をこの森の中の何処かにため込んでいる、という事に他ならない。
その秘密を数多くの探検者が探し求めているものの、それを未だに見出す事が出来ない。
かく言う私たちも同じようにその秘密を探し求めているが、他の探検者同様痕跡すら見つけることは出来ていない。
今回の私達の探検の目的はこの秘密、というわけではないがせっかくなのでその痕跡を見つけられればついでにという腹積もりではある。
「おう、もう着いてたのか。早いね。」
ミディだ。
いつもの通り、ちょっとばかり遅れてからミディが森の入り口に到着する。
「待ってたわよ。キャスカ、ミディが来たわ。」
私はキャスカに向かってミディが来たことを告げるものの、キャスカはまだ先日の一件を引きずっているらしく、ミディの事を真っすぐ見る事が出来無い。
それほどまでに傷ついてしまっていたのだろう。
キャスカはここ数日の間落ち込んでいて、ほとんど仕事が手に着かない状態だった。
私はそんなキャスカを見兼ねて、数日の間私の家に招いてご飯を食べさせたり、時には私のベッドで一緒に寝る事もあった。
でも探検に行く以上、ここで仲直りしておかないと森の中で何かあった時には大変なことになってしまう。
それは確実に三人の死に繋がる。
「ミディ。ねえ、キャスカに何か言う事は無い?」
私はこの仲違いの原因であるミディをジッと見て、言葉無しにキャスカへの謝罪を催促する。
パンを貰う為に私の家へミディが訪れる度、口を酸っぱくしてキャスカに謝るように忠告していたものの、その都度のらりくらりと躱されてしまっていた。
そして昨日、私は遂に堪忍袋の緒を切らし、ミディに向かってドスの効いた声でキャスカへの謝罪を迫ったのだ。
あの時のミディの顔と言ったら忘れられない。今まで見たことがない程に青くなっていたな。まるでラピスラズリの群青色と見まがうほどに顔色が青かった。
「キャスカ、その、なんだ。ごめんな。この通り。」
ミディはキャスカに向かって、恥ずかしさを含んだどもり声で叩頭しつつ謝罪の言葉を伝える。
それを俯きながら聞いていたキャスカだったが、意を決したようにミディの前へ一歩、二歩と躍り出る。
「もう、変な事言うんじゃ・・・、ないぞ・・・。」
キャスカもやっぱり恥ずかしいのか顔を紅潮させつつ、大人しくミディの謝罪を受け入れた。
「すまん。本当にごめんな。」
ミディは自らの謝罪が受け入れられた事に安堵し、少しずつ緊張がほぐれ笑顔が戻りつつあった。
だが間髪を入れず、ミディは思いもしない要求をキャスカから突き付けられる。
「ミディ、代わりにやってもらいたい事がある。今。」
「へ?森に入る前に?何を?」
「あそこに見える岩。このハンマーで砕くの。やって。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます