ミディ、やり過ぎ。
「なあにぃ?もしかして、粗悪品つかまされちゃったんですかあ?」
先程のお返しと言わんばかりに、ミディはキャスカに向かっていやらしく笑いながらキャスカを煽る。
「・・・そうかも、しれない・・・。でも・・・、ちゃんと効果はあるから・・・。」
「でもねえ、本来なら匂いは無かったんでしょお?」
「無かった・・・。ぐすっ。」
キャスカの目にうっすらと光る滴が沸き上がる。
ああいけない、ミディ、やり過ぎ。キャスカが泣いちゃう。
キャスカは立派に見えるけどやっぱりまだお子さまなのに。
「ミディ、そろそろいい加減にしときなさいよ。私、本当に怒るよ?」
「ええ?そう?」
「・・・。」
キャスカの小さい瞳から滴が一滴、二滴垂れ落ちる。
それを見たミディは漸くしまったという顔をする。だが時すでに遅しだ。
「あー。わーるかったって。ごめんなキャスカ。ごめんごめん。許して。」
泣きじゃくるキャスカを目の前にバツを悪くしたミディが何度も謝罪の弁を述べるものの、キャスカは泣き止むそぶりすら見せない。
「今回のはミディが悪いのよ。子供相手に全く大人げないわ。」
「あれ、キャスカって十六ぐらいじゃなかったっけ・・・。」
「まだ十四歳よ。」
そう、キャスカはまだ十四歳で背も低く、例えこの調剤薬局を経営しているとはいえ子供と言ってしまえば子供なのだ。
そんな子供に向かって散々悪戯だの煽り倒すだの酷い事を続ける今日のミディに、私は少し腹が立った。
例え親しい中であっても礼儀は有る筈だから。
「これは何か、そうねえ。プレゼントが要るわね。キャスカ、何が欲しい?ミディが何でも買ってくれるって言ってるわよ。」
「・・・なんでも?」
「いや、リエラ、何でもっていうのはちょっと・・・。」
「ふーん?ミディ、それでいいの?近所のおば様方にキャスカを泣かせたって、口走っちゃうかもなあ?」
キャスカは小さい頃にこの辺りで数多くの悪戯をこなした、いわばお尋ね者である。
其れゆえにキャスカは近所のおば様方には頭が上がらない。
何かあれば比喩表現でも何でもなく、お尻ぺんぺんの刑だから。
「じゃあ、今度の探検の取り分無しで・・・。」
「いやあ、それはちょっと勘弁願いたいなあ。タダ働きじゃないか。」
「でも、それぐらいの事はしたわよ。ミディ。」
「うう・・・。そこを何とか・・・。」
ミディは財布の中身をすっからかんにしてしまった時のような苦しい表情をして、キャスカに懇願する。
私はこのミディの顔をしょっちゅう見る気がする。そういえば先週もレストランでお金足りなくなって貸してくれって懇願されたっけ。返してもらったっけあのお金?
「・・・じゃあ、熊胆ちょうだい・・・。」
「熊胆なら・・・。えっ?」
「熊胆。分割払いでもいいよ。」
「あの・・・お幾らに・・・、なりますでしょうか・・・?」
キャスカは黙って指を五本、ミディの前にかざす。
「ああ、五・・・。お求めやすい価格帯で・・・。」
さらにキャスカはもう片方の手で丸を作り、キャスカの眼の前にかざす。
「五十・・・。いいお値段で・・・。え・・・本当に払うの?」
「当たり前でしょ。正直これぐらいで済んでるだけありがたいと思いなさい。あとこの間貸したお金も返してね。」
「ひぃい、ご無体なああ。」
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