暇だなあ
私、リエラはそこそこ大きい町のまあまあ有名な調剤薬局で店員をしているが、月の半分は森や遺跡、山などに探索に向かう兼業探検家みたいなことをしている。
探検は一人だけで行くわけではなく、勿論同行人がいる。
それがこの調剤薬局の店主、先程実験失敗したあの彼女、キャスカだ。そしてあともう一人、魔法使いの同い年のあいつ、ミディも居る。
私達の探検の仕方はこの調剤薬局に務めているという事で他の探検家達とはちょっと異なっていて、基本的にモンスターとの遭遇を避ける傾向にある。
一般的な探検家達は力に優れる者や、強力な魔法が使える者、それに剣技や槍技、弓術など武芸に秀でる人間を大人数集め、数日間その地をキャンプしながら周囲を探索する。
そしてそこに存在する武具の遺物、金や銀、それに希少な鉱石、または煌びやかな宝飾品の遺物を収集し町に持ちかえる。
だが私達が探検で探し求める物はこういう直接的な価値のある物ではない。
私達が探索で探し求める物、それは遺跡に放棄、もしくは隠された古代の石板や書類、壁画の資料、本、古代文字、遺跡や森の植物のサンプル、土壌のサンプル、魔素のかけら、原生生物、所謂モンスターの痕跡やその組織片、またはその一部だ。
その探索で得た物を元に私たちは、太古に存在したであろう今の人間が体験した事の無い病気の研究、新魔法の開発、魔法補助具の開発、新薬の開発、薬の低コスト化等を行っているのだ。
まぁ時には毒も作る。毒も適量であれば薬にもなるし。
致死量に至る物だって勿論出来てしまうけど、そういうのは冒険の時にだけ使う。
勿論モンスター相手、とも限らないけど。
周辺の村々宛ての商品の送り出しを済ませ、漸く暇になった私とキャスカは店の奥でダラダラと休憩を貪っている。
一日に十人くらいの出入りがあれば多いという店なので、朝の配送が終われば暇を持て余すのだ。
「ふあ、さてさて。次の探索はいつにするかね。」
キャスカは欠伸をしながら薬草のカタログをぺらぺらと捲りつつ私に気の抜けた声で話しかける。
「なにか足りない物でもあるの?」
「ああ、沢山あるぞ。黄竜胆の栽培用サンプルに
「じゃあミディと探索の日程調整しないといけないね。」
「はああ、そうだなあ。めんどくさいなあ。その辺全部頼んだよ、リエラ。」
「構わないけど、
ガランガラン。
店の入り口に設けられているウェルカムベルが私を呼ぶように鳴る。
「おやめずらしい。お客さんだ。対応たのんだ。」
「はいはい、戻って来るまでにちゃんと日程決めておいてね。」
「はああい。」
キャスカの生返事を横目に、お客さんを待たせてはいけないと私は店頭に早足へ向うのだった。
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