第5話 女(JK)三人寄れば姦しい!?
なじみにとっての幼馴染くん♂との関わり方と言うのは、己が意識しているかいないかに関わらず、自分が彼の"世話を焼く"と言うのが柱になっていた。
彼が朝起きるのが苦手だからと言うことで朝彼を起こしに行っていたし、お弁当を作っていたのは、彼のお母さんは仕事が忙しくてお弁当を作るのが大変だと彼にパン代を渡していると聞いたので、じゃあついでに私が…と言いだしたのがきっかけだった。
学校でも居眠りで寝癖がついている彼の髪を直したり、体育の後シャツやネクタイが変になっていたらそれを整えてあげたり…。
甘いものが好きなのも知っていたので、調理実習でお菓子を作った時には出来上がったクッキーやマフィンを差し入れにプレゼントしたり…。
そうしたやり取りは、転入生ちゃんが現れてからもしばらくの間は続けられてて、少なくともそれまでは、彼もそれを普通に受け入れていてくれた(ように思えた)。
しかし、受け入れられていた=恋愛感情がそこにあった とはならなかったのは歴史が語る真実となったわけだから、この周回では同じことをやっていてはいけない。
…とは言え、なじみも『それじゃダメ』とまではわかっても、それじゃあどうしたらいいのか?という答えにはたどり着けていないのだった。
そんなわけで、今、なじみは、自分の中にいらっしゃる悪役令嬢アクーヤお嬢様と共に、クラスメイトの女子たちの恋バナに混ざることで情報収集を行っているところだ。
「そう言えば、亜里沙さー。昨日、隣のクラスの南に告られてたでしょ!なんて返事したん?」
「は?!ちょ、もーー!!なんでアンタが知ってんのよ~~~」
「おお~!ヤバイじゃん。南くん、超カッコいいよね。どんな風に告られたん?」
「えー…いや、実はバイト先が一緒なんだけどさー。シフトが一緒になってちょっと良い感じになってー…」
(…アルバイトで一緒になった縁…なるほど、そういうのもあるんだ…)
なじみは、女子たちの話に「そうなんだ」「えーー!」「すごーい」とタイミングよく相槌を打ちながら彼女たちの会話の中で役に立ちそうな恋愛テクを探していく。
「あ、あの、えっと僭越ながら質問よろしいでしょうか…」
なじみはおずおずと挙手する。口調も何だかちょっと変な感じになってしまったがなじみは大真面目である。文字通り人生がかかっている。
「ちょ、なじみちゃんウケる。何その言い方」
「真面目ちゃんか!!!!」
大笑いされながらも彼女たちはなじみの話を聞いてくれる。
「え、えっと、その"良い感じ"って言うのは、具体的にどんな感じになったのかなって…」
それは素朴な疑問だった。なじみにとって未知である。
なじみの言葉に、質問された亜里沙という女生徒は少しだけ首を傾げ、考えるような表情をした後に口を開く。
「んー…具体的にって言うと難しいけど…。
ほら、自分を見る目が熱っぽいというか、キラキラしてるっていうか…」
「ギラギラじゃないの?」
「茶化さないでよ、もう!」
「…あ、あと…それから、どんな風に親しくなっていったんですか?」
「おお…???なじみちゃん、興味津々じゃん!もしかして好きな人とかいるのかな???」
「ええー!!?誰々?このクラスのやつ?????」
今度はなじみの方が質問攻めにあってしまう…!
「あ、え、えっとぉ…その…」
『気になる人がいる、くらいで適当にボカしておきなさいな。なじみ』
助け船とばかり頭に響くアクーヤの声に、なじみはハッと我に返る。なんとかこの場を取り繕わなくては…。
「…あ、え、えっと…ちょっと気になってる人がいるんだけど、その…どう親しくなったら良いかなぁ…って悩んでて…」
女子たちはワーワーキャーキャー黄色い歓声を上げて盛り上がっている。
どちらかと言うと大人しい方ではあるが、なじみは実は顔もスタイルもクラスで1位2位と言われるくらいの美少女であるし、幼馴染くん♂以外に対しても優しく面倒見がいいため、クラスの男子から密かに人気があったのだ。
女子たちからしても、そんななじみが気になる男子って!?と興味津々になってしまったというわけである。相手が誰かを聞き出そうとしながらも、なじみが口ごもると無理に聞き出したりはせず、その恋愛相談に乗ってくれたのだった。
「気になる男子が出来たら、やっぱりアピールあるのみっしょ。他の女にちょっかい出される前に自分のものにしないと!」
女子の一人が言うと、なじみの中のアクーヤも『全くその通りですわ』とうんうんと頷いている。
「だから、なじみちんはそのアピールの方法で悩んでるんでしょ」
「えー…そりゃあ、自分は相手に興味があります!って感じでたくさん絡んでいくのがいいんでね?」
「あとは、なじみちゃんの可愛い顔とナイスバディを活かして、こう…ボディタッチを多めにするとか…」
「え、えええ!?」
「いやいや、なじみちゃんは清純派でしょ!変なこと教えこむなよーー!」
「逆に、真面目ちゃんのイメージがあるからこそ、ギャップでガツンって行く可能性は…?」
「なるほど………」
目の前で繰り広げられるJKたちの恋愛作戦会議に、なじみは当事者であるはずなのに圧倒されて目を白黒させてしまっている。
"前回"の時も親しい女友達はたくさんいたし、今 目の前にいる顔ぶれにも”前回”から引き続き仲良くなれた子もいる。しかし、こんな風な会話をした記憶はない。幼馴染くん♂のことも、恋愛のことも誰かに相談したことなんてなかったのだ。
その間にも女子たちは、やいのやいのと盛り上がって、なじみの髪をいじって編み込みを入れたり、メイク道具で流行りのメイクをしだしたりと、無邪気に楽しんでいる。
なじみは女子たちにもみくちゃにされながらも、なんだかこう言うのも良いな…なんて、感じたことがなかったくすぐったさを感じたのだった。
『まぁ、肝心のアドバイスに関しては、どこまで参考にするか悩ましいところですけれどね…。所詮、恋愛経験に乏しい小娘たちですから、仕方ありませんわね…』
(小娘って!!!アクーヤさんだって17歳だよね!???)
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