第4話
「りゅうちゃん……」
抱えていた書類を半分以上りゅうちゃんに奪われて僕は少し戸惑った。ぶっきらぼうだけど優しいのはあの頃と変わらない。
「…これ、どうすんの?」
僕に背を向けたままりゅうちゃんは書類の束をピラピラしてみせる。
「あ、机に一枚ずつ置いていってくれる?」
僕がそう言うとりゅうちゃんは頷いて書類を素早く置いていく。それに倣い僕も作業を再開した。
配布された書類を全て片付けると――
「ありがとう! りゅうちゃん!」
意外にも早く作業が終わったので僕は嬉しくなって、つい癖で――小学生の時いつもりゅうちゃんの側に駆け寄っていた――りゅうちゃんに何の躊躇いもなく近づいてしまった。
「……ッ」
それにびっくりしたのか、りゅうちゃんは身を翻すように僕から少し距離を取った気がした――
――『嫌』、だったんだろう。
前まであんなに仲良かったのに、避けるほど距離が開いてしまった事実を目の当たりにして僕は心がチクリと痛んだ。
「……」
そこから数歩離れるようにして、
「…ご…、ごめん……」
俯いて咄嗟に謝る。
「……いや」
柔らかく呟くりゅうちゃん。
――少し、声が低くなった?
遠慮がちに上目遣いでりゅうちゃんを盗み見ると――
「…何か…、お前が雑用させられてるみたいで…嫌だった…」
唇を少し尖らせて拗ねたように呟いた。その姿は【あの頃】と変わっていなくて、僕はまた嬉しくなり――
「学級代表ってそんなもんだよ」
気を取り直し、軽い口調で言う。
「ふーん、そう」
りゅうちゃんも軽く返してくる。
そして、仕事を終えた会社員のようにすぐに鞄を肩にかけ、教室から出ようとした――
――もしかして帰ろうとしてる?
そう思い焦ってしまった僕は、
「…え? りゅうちゃん帰っちゃうの?!」
ちょっと言い方が荒くなって、りゅうちゃんの背中に問い詰める形となった。
りゅうちゃんは戸口前で立ち止まり、「…あー…と」口の中で言葉を濁したかと思うと、踵を返し向き僕の前までズカズカと来ると、
「…間違えた、だけ」
一言告げると早々に自分のあてがわれた席に腰掛けてしまった。
「……」
そんなりゅうちゃんに僕は呆気に取られ密かに溜息を吐いた――
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