第402話 マーティが入ったドアの中 ②

 

「ねえお兄ちゃん、どこ行くの?」女の子が付いてくる。

「ある物を探しにいくんだ」

「ある物?」

「そうだ」


「ねえ、お兄ちゃんは外の世界から来たんでしょう?」

「外の世界? どういう意味だ?」足を止めて振り返ると「この先にある、外の世界に通じてるドアから来たんでしょう?」入ってきたドアがある通路の先を指すので「まあそうだが、ドアの先が外の世界と言うなら、ここは内の世界とでも言うのか?」

「そうだよ」


「……やっぱり意味がわからない」

「うんとね、私たちは、この石の中に住んでるの」

「石の中?」


「そうだよ。この石の中で生活してるの」右側の壁を叩くので「石の中で生活してる……」やっぱり意味がわからないので、困った顔をすると「鍵を探しにきたんでしょう?」

「なぜ知ってるんだ!」思いもしなかったことを聞かれ、動揺してしまう。


「やっぱり、お祖父ちゃんが言ってた人なんだ」

「お祖父ちゃん? 君のお祖父さんか?」

「そうだよ」


「そのお祖父ちゃんは、他になんて言ってたんだ?」

「えっとね、もしその人に会ったら、鍵がある場所まで案内しなさいって」

「鍵がある場所を知ってるのか?」

「うん、知ってるよ」


「それは助かる。その場所まで案内してくれないか?」

「うん、いいよ」

「俺はマーティだ」

「私はベネット。ベネって呼んで」


「それで、鍵がある場所まで遠いのか?」

「うん。それに、ちょっと危ないところを通るの。お兄ちゃんが守ってくれるなら、案内してあげてもいいけど」

「ベネの安全は俺が保障する」


「本当? 途中で見捨てたりしない?」

「そんな事するか」

「絶対?」

「見捨てていったら、鍵がある場所まで行けないだろう」

「そうだよね。じゃ、案内してあげる」

「助かる」


「じゃあ、最初に私の家にいこう。食べ物とか持ってかないといけないんだ。こっちだよ」通路を奥へ歩いていくので「そういえば、友達が来るんだろう? いいのか?」ベネのあとから付いていくと「途中で会うから、その時に話せば大丈夫だよ」


「この通路は一本道なのか?」

「途中まではね」

「途中までは? では、その先は枝分かれしてるのか?」

「うん」

「……そうか」


 その後、通路は左右に数回曲がるが、途中まではベネが言ったとおり一本道で、枝分かれの通路が出てきたころ、向かいから数名の子供たちが現れた。

 ベネが用事ができたことを話すと、外の世界から来たと紹介されたマーティに興味を持ったのか、子供たちがあとから付いてくる。


「遊びに行かなくていいのか?」取り囲む子供たちに聞くと「お兄ちゃんを送ったら遊びに行くよ」答えるリーダー格らしい少年が「本当に外の世界から来たの?」と興味津々の顔をするので「ああ、そうだ」

「すごい! 外の話を聞かせて!」

「あとでな」

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