第398話 ドアの部屋 ③

 

 石の床は天井の二メートル手前近くまでせり上がると止まり、今度は四方の壁から柱が出てきて組み合わさると、碁盤の目のような格子模様を作る。


「ま、まさか、こ、こんな狭い、は、柱の上を、は、って、さ、探せと、い、言うんじゃ、な、ないでしょう、ね?」


『その、まさかです』


「嫌よ! こ、この、た、高さから、お、落ちたら、し、死んじゃうじゃ、な、ないの! も、もし、そ、そうなったら、ど、どう、せ、責任、と、取ってくれるのよ!」


『責任は取れません。落ちたたあなたの不注意ですから』

「なんですって!」


「ニゲラ!」大声を出すロイに『こればかりはどうしようもありません。天井にあるドアの鏡を選んだのは彼女ですから』

「こ、このブレスレットが! え、選ばせたんでしょう!」

『そうです。あなたが着けているブレスレットが選ばせたのです。私ではありません』


 その後、沈黙が続くので『ドアに入るのを諦めて、降りますか?』

「バーネット、大丈夫か? 無理は……」ロイが声を掛けると「わかったわよ! ええ、ええ、私が悪いのよ! もし落ちて死んだら、みんなの枕元に、毎晩、立ってあげるわ!」言葉をさえぎり、大声を出す。


「安眠妨害は止めてくれ」

『マーティ。少しは心配してあげてよ』シュールが注意すると「バーネット。スカートのすそひざ上でとめて、柱の幅を確かめながら、ずり足で動け」


「ス、スカートを、ま、まくり上げろと言うの! そ、そんなこと、し、したら、パンツが見えちゃうじゃない! スケベ!」


「落ちるよりマシだろう? それが一番安全な方法だ」

「……わ、わかったわ。でも! み、見付かるまで、ぜ、絶対、う、上を見ないでよ!」

「バーネットのパンツなんか、見たいと思わない」


「なに!」

「いや」


「バーネット! 早くドアを見付けるほうが先だよ。気になるのはわかるけど、命のほうが優先だから、ここは我慢して」ロイが声を掛けると「そ、そう言って、く、くれれば、わ、私だって、が、我慢する、わ。マーティ、も、もうちょっと、い、言い方を、べ、勉強、す、するのね」

「わかったから、今は言うとおりにしろ」


「も、もう」バーネットはスカートのすそひざ上でしばり、四つんいになると大きく息を吐いて、言われたとおり、ずり足でゆっくりと柱の上を進みだす。


 一歩ずつ時間をかけて進み「ど、どれよ!」文句を言いつつ探していくと「バーネット! 柱が交差してる場所へ行くんだ! 」声を掛けるロイ。「そこからドアの窪みを確認するんだ!」


「そ、そんなこと、い、言われたって」一歩ずつ確かめながら進み、部屋の中央にある柱を、メインドアに向かって柱が交差してるところまで行き、ため息を吐いて真ん中に座り込むと、ゆっくりと左右に伸びている柱の上の天井に付いているドアを、右側から一つずつ確認していく。


 そして、左に伸びている柱の上のドアを見たとき「アッ!」

「見付かった?」心配そうに見上げるロイたちに「あれかも、しれない」向きを変えてゆっくり進み、天井にあるドアの窪みにコンパクトを合わせると「これだわ!」


 そのドアは、真っ白でツルツルしたステンレスのようなものでできていた。

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