第394話 鏡の部屋 ①

 

 ロイを先頭に、バーネット、アニス、マーティの順で階段を降りていく。

 階段は濃いグレーのゴツゴツした石で、壁も同じ石でできている。


 壁に付いているランプは、外灯がいとうのような形をしたブロンズで作られた傘に縦形の長方形のガラスケースで、中に螺旋らせん状にねじれたロウソクが三本立てられ、白い炎をあげている。


「階段は嫌だな」呟くロイの声が反響すると「あの時のことを思い出すな」後ろからマーティの声が響いてくる。

 第二の水龍の門で、長い氷の階段を昇ったことを思い出していた。


『この階段も、どこまで続くんだろうね』一緒に階段登りを経験したシュールが不安そうに聞くと『もうすぐ終わります』階段の下からニゲラの声が響いてくる。


 言われたとおり階段はすぐに終わり、小さなホールに出ると、ニゲラは階段脇にある大きなランプの上にとまっていた。


『次はそこのドアです。尋ね人、開けてください』正面の濃い木目調のドアを見るので、ゆっくり開けて中を見ると「何だ、この部屋は?」

 中には、数え切れないくらいの鏡がところ狭しと置いてあった。


『すごい数。よくもまあ、こんなに集めたもんだね』感心しているのか呆れているのかわからないシュール。


「この中から一枚の鏡を探せ、とか言うんじゃないだろうな?」ロイがため息を吐いてニゲラを見ると『そんなことは言いませんから、安心してください』答えると部屋の中に飛んでいき、ドア横の大きなサイドランプにとまると『皆さんには、この中から一枚の鏡を選んでもらいます』


「勝手に選んでいいのか?」

『はい。でも、その前に、第一の門のキーマンの方。あなたが持ってきたブレスレットを、彼女たちに渡してください』

「俺が持ってきたのは男物だぞ。二人の腕に合うとは思えないが、それでも渡せと言うのか?」

『渡してください。そして、腕にめてください』

「……わかった」バックから二つのブレスレットを出すと、アニスとバーネットに渡す。


「腕を振ったらすっぽ抜けるわね。途中で落としたらどうするの?」どう見ても、二の腕に合いそうな大きさのブレスレットを左手首にめると「エッ?」ブレスレットは、ピッタリとバーネットの手首に納まる。「どうして?」


「私も、ピッタリ」アニスも不思議そうに左手首のブレスレットを見る。

「二人とも、見掛けによらず腕が太いんだな」


 ギロッ!


「マーティ。そういうことを女性に言って、なぐられないとでも思って?」バーネットがにらみつけると「正直に思ったことを言っただけだ」


「よせマーティ。そんな冗談通じないぞ。なぐられる前に謝れ!」

「悪かった。冗談のつもりだった」即答すると「訂正する必要がないよう、今後、そういう発言は、控えたほうがいいわよ」

「わかった。気を付ける」


「でも、どうしてピッタリ合うの? 受け取ったときは、絶対手首より大きかったわよ」謎解きに戻るバーネット。

「僕たちが貰ったときも同じ疑問が出たよ。そうしたらミルが、ああ、さっきの映像にあった男の子だけど、それも、ブレスレットを作ったソレルという職人の腕だと説明してくれたよ」

「十分な説明になってないけど、それで納得するしかないのね?」

「そうだね」

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