第392話 余計なことをしてきたもの ③

 

 バーネットが空になったペットボトルを受け取ると『落ち着かれたようなので確認させてください』ニゲラが声を掛けてくる。『指定した物は持ってきましたか?』

「ああ、ここにある」ニゲラがとまっている石像の前に行き、両手の小指に填めている指輪を見せると『結構です』確認して頷く。


 戻ってくるロイに「どんな指輪なの?」興味を持つバーネットが傍に来るので、右手の小指に填めてある指輪を見せる。

 それはシルバーと思われる金属でできており、ブレスレットと同じ模様が刻まれ、菱形をした薄紫色の宝石が一つ付いていた。

「ずいぶんと大きな宝石ね」


「マーティ、ペンダント、一角獣の、瞳、同じ色」バーネットの隣に来るアニス。

「あら、そういえばそうね」

「よく気付いたね。そう、同じ宝石だよ」

「ロイは知ってたの?」


「いや、ニゲラから聞いたんだ」

「エッ、彼女に?」振り返ってニゲラを見ると「なぜ知ってるのか、とか、どうして第一の門の象徴の石と同じなのかって聞いても、教えてくれないでしょうね」

「私が答える質問ではありませんって言われるよ」


『よくわかってますね』

「ほら」

「……わかったわ」肩をすくめてため息を吐く。


 その後、アニスが剣をロイに渡すと「ありがとう。シュール、大丈夫だった?」

『大丈夫じゃない。待ちくたびれた』

「ごめん、ごめん」


『そういえば、ニネに会ってきたんだよね。突然帰ったから、ビックリしたんじゃない?』

「僕のほうが驚いたよ」

『どうして?』


「ニネとお師匠様が、僕が戻ってくることを予知してたんだ。みんな宇宙ステーションにいると思ってたのに、自宅に入ったら玄関に親父たちが立ってるから、度肝を抜かれたよ」

『そっか。みんな宇宙ステーションに移動してるんだっけ』

「まあね。そのお陰で、宇宙ステーションに行く手間がはぶけたんけどね」


『でも、久しぶりに会えたからって、戻ってくるのが遅すぎるよ』

「仕方ないだろう。時間がないって言ってるのに、連絡できなくなってからのことを話せと親父がうるさいから、話してきたんだよ」

『ああ、クレイモアの谷に入ってから連絡してないんだったね』

「できる状態じゃなかったからな」


『それに、ニネが止めたからでしょう?』

「……鋭いところを突くな」

『やっぱり』

「止めなかったよ。でも、またあの悲しそうな顔をされるとね」


「ネェ、ニネって誰なの?」バーネットが話に入ってくる。

「ニネは親父専属の予言者なんだ。僕にとっては妹分の子だよ」

「フウン、そうなの。妹分てことは、ロイより年下よね?」

「そうだよ。確か、今年で十七になったんじゃないかな?」

「その年で統治者専属なの!」


「ニネが親父専属になったのは十四のときだよ」

「十四歳!」顔を見合わせるアニスとバーネット。

『後ろ髪を引かれたでしょう?』とシュールが言うので「どこでそんな言葉を覚えたんだよ」

『この前見たヒューマンドラマ』

「あれか。まったく、何でも吸収する巨大スポンジのような脳細胞だな」


『戻るのやめようか迷ったんじゃない?』

「やけに突っ掛かるな」

「シュール。戻ってきたんだから、そこまでにしなさい」バーネットがやんわりと注意する。「それに、彼女は長いことロイに会ってなかったのよ。少しくらい多めに見てあげなさい」


『べつにィ、どうでもいいけどォ』

「何だよ、その言い方は」ムッとすると「ロイ、ダメよ」バーネットが小声で注意する。


「ロイ、箱」アニスが預かった小箱を差し出すので「ああ、ありがとう」受け取ると「それ、何?」

「お師匠様から預かってきたものなんだ」

「何、入ってる?」

「さあ。第四の門に入ったら開けるよう言われてるから、わからないな」

「今、開ける、いけない?」

「言われたことは守るようにきつく言われたからね」

「そう……」


「ところで、マーティは戻ってきてないのか?」

「ごらんのとおり、まだよ」バーネットが答えると「何やってんだ? 最初に行ったのに」

『ロイだって十分遅い!』まだまだ不機嫌なシュール。

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