第391話 余計なことをしてきたもの ②

 

 次に戻ってきたのはバーネットだった。ガラガラと重そうに大きなキャリーバッグを引いてくる。


『バーネット! 一体何を持ってきたの?』シュールが呆れると「……水と、フルーツ……」苦しそうに答え、キャリーバッグを置くと大きく深呼吸をする。

『クミン叔母さんのお菓子はないの?』

「叔母さんの、案内所まで、行く時間が、なかったから……」


『でも、ディルは叔母さんの案内所でバイトしてるんでしょう? サークレットを貰わないといけないから、来るまで待ってたんじゃないの?』

「私たちが出発した翌日、火炎の宮殿に行ったローズドックが、朱雀から、サークレットをまとめて持っておくよう言われたんですって」


『そうなんだ。でも、どうして水まで持ってきたの?』

「覚えてないの? ゴールドデザート星の水は、上質のミネラルウォーターとして有名なのよ」

『そういえば、みんな美味しそうに飲んでたね』


「最初はそんなに重く感じなかったんだけど、道程が長過ぎるわ」

『そんなに持ってくるからだよ。程々にしとかなきゃ』

「だって、ジュニパーがこんなに用意するんだもの」

 バッグを開けると、中からペットボトルを取りだして飲みはじめる。


『ジュニパーって、巫女の屋敷で出迎えてくれた、ソバージュヘアの人だよね?』

「そうよ。ああ! 美味しい! 生き返るわ!」


「バーネット、一本、貰らって、いい?」アニスが聞くので「いいわよ。たくさんあるから」バッグからもう一本取りだして渡すと「ありがとう」嬉しそうにキャップを取り、半分くらい一気飲みすると「本当、美味しい」ホッと息をらす。


『一息ついたようなので確認だけさせてください。サークレットは持ってきましたか?』頃合を見計らってニゲラが聞いてくるので「もちろん持ってきたわよ。ここにあるのが見えないかしら?」額を指さし「ここなら絶対に忘れないし、無くさないわ」



 それからさらに一時間が経った。

「ロイたち、何してる、かしら?」待ちくたびれてしまったアニス。

『きっと、お気に入りのケーキをたくさん食べてるんだ』予測するシュール。今はアニスが剣を持っている。

「マーティなんか最初に行ったのに、どこで脱線してるのかしら?」バーネットがバッグに腰掛けてため息を吐くと、遠くから足音が聞こえてきた。


「誰か、戻って、きた!」アニスがマーティの向かった通路を見ると、バーネットはロイが向かった通路の奥を見る。


「遅くなってごめん!」ロイが息を切らして走ってきた。

『ローイー、遅いよぉ』待ちくたびれたシュールがダレ切った声をだすので「ごめん、ごめん。これでも、急いで戻ってきたんだぞ」額にうっすらと汗をいている。


「汗、拭いて」アニスがハンドタオルを渡すと「ありがとう。これ、持っててくれないか?」脇に抱えている小箱を渡し、汗を拭きはじめる。


「私からは水の差し入れよ」ペットボトルを差しだすと「サンキュー! 喉がカラカラだったんだ!」キャップを開けると一気に飲み干し「ああ、うまい! もしかして、ゴールドデザート星の水?」

「そうよ」

「やっぱり!」

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