第389話 試されていた事件

 

『両方、持ってきてください』


(シルバーバイオレットは、ブレスレットに填まってる、第一の門の象徴の石だ。確か、マーティが持ってる一角獣のペンダントの瞳の石でもある。その石が、ニネがめてる指輪に付いてるのか?)その指輪を思い出そうと記憶をたどりつつ「なぜニネの指輪なんだ?」と聞きくと『それは、使うときにわかります』

「それまで教えられないと言うのか?」

『そうです』

「……わかった」


『ロイ』シュールが不安そうに呼ぶので「心配するな。シュールをこんなところに置き去りにしないよ」

『戻ってきてね』

「もちろん」再びニゲラを見ると「で、僕はどの通路へ行けばいいんだ?」

『今、通ってきた通路です』


「それでは戻ってしまうだろう?」

『戻ることはできません。先程、時空に入ったと説明したじゃないですか』

「そうだが、どこから時空に入ったんだ?」

『気付かなかったのであれば、説明してもわからないでしょう』

「したくないんだろう?」

『する必要ありませんから』


「そうかよ」ムッとするが、ふと疑問に思ったことを聞く。「さっき、剣は時空を超えられないと言ったが、今現在、時空の中にいるんだったら、何か影響を及ぼすんじゃないか?」

『宮殿から出なければ、影響は外へれません』

「何か、特殊なバリアでも張ってあるのか?」

『そうです』


「なるほど」一応納得すると、ニゲラがとまっている像の反対側の壁に剣を立てかけ「僕が戻ってくるまで触るな」

『わかりました』

「シュール。何かあったら、特大のプラズマを出せ」

『了解!』


『私を、姑息こそくな泥棒と一緒にしてもらいたくないですね』

「何だって?」

『私は、その剣がどのような力を持ってるのか、知ってるんですよ』

姑息こそくな泥棒とは、アグリモニー星で会ったビルドとカードーンのことを言ってるのか?」

『……さあ?』


「まあ、僕たちのことを見てきたんだから、知らないわけないだろうが、なぜ奴らのことを引き合いに出す」

『もしかしてあの時、何かしたの?』不審に思うシュールが聞くと黙り込むので「一体何をしたんだ? まさか、ビルドたちを操って、剣を盗ませたとか言うんじゃないだろうな?」


『もし、そうだと言ったら?』

「なぜそんな事をしたのか、理由を聞かせてもらいたいね」

『聞いてどうするんですか?』

「それは、内容によって異なる」


 また黙り込むので、彼女が仕掛けたのは間違いないと確信すると「何のためにあんな事をしたんだ?」怒りを押さえて問い詰める。すると『あなたたちの信頼関係がどの程度のものなのか、知る必要があったからです』


「信頼関係だと?」

『その剣は、我々にとって大切なものです。その剣をたくす尋ね人が、どれだけその剣を大切にしているか、確認する必要があったからです』

「僕を試すためにあんな事をしたのか?」

『そうです』


「試すだけならもっと他に方法があったろう! ケガ人や死者が出たんだぞ!」

『それは私のせいではありません。人間の欲望が引き起こしたことです』

「……それは」


『その事は、あなたにも分かってるのではありませんか?』

「……わかってる。しかし、君も知ってることだ。なら、そうならない方法を取るべきじゃないのか?」

『では、そうならない環境を作るべきではないですか?』

 そう言い返されて、言葉を返せない。


『わかってるのであれば、私を責めることはできないのではないですか?』

 沈黙が続くと『ねえニゲラ。もしあの時、ロイが剣を大切に扱ってないと思ったらどうなってたの?』シュールの質問に『彼の旅は終わってました』即答する。


『どうして?』

『新しい尋ね人に代わっていたからです』

「僕の他に候補者がいるのか?」

『もちろんです』


『私はロイじゃないと認めないからね! ロイはいつも大切にしてくれてるよ!』

『わかってます。だからここまで来られたのです』

『……そっか』


『では尋ね人、指定した物を取ってきてください』

「……わかった」通ってきた通路を向くが、振り返り、ニゲラを見ると「もう一度言っておくが、僕が戻ってくるまで剣に触るな」

『わかってます』

「じゃあシュール、行ってくる」

『気を付けてね』


 ロイは来た通路を戻っていく。

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