第387話 意外な依頼 ①

 

『二つありますよね?』

「なぜその事を知ってるんだ?」

『二つとも持ってきてください』

「質問に答えてないぞ」


『私は、あなたたちのことをすべて知っています』

「すべてだと?」

『そうです。尋ね人が口伝の指示に従って星から出たとき、あなたたちのことを調べさせてもらいました』


「その時から、俺たちが関わると知ってたのか?」

「そうです」

「では、これから先の事もわかるのか?」

『未来は随時、変わりますから』

「……そうだな」


『さあ、取ってきてください』

「俺がいた星はここからかなり遠い。往復するのにどの位かかると思ってるんだ?」

『距離は問題ありません。行けばわかります』

「……そうか。時空を、越えられるんだったな」

『そうです。さあ、取ってきてください』


「マーティ、気を、付けて」声を掛けるアニス。

「またここで会いましょう」バーネットが明るく言うと『アルバスとセージか。懐かしい』二人の顔を思い出すシュール。


「戻ってきてくれよ」肩を叩くロイに「心配するな。アイツらに会って、嫌味を聞いたら戻ってくる」

「こっちのことは心配しないように言っといてくれ」

 マーティは四人に見送られて、右側の通路へ歩いていく。


『次は、第二の門のキーマンの方』

「ハ、ハイ!」アニスが慌てて返事をすると『あなたは左側の通路へ行ってください』

「左側……」真っ暗な通路の奥を見る。


『そして、持ってきてもらう物は、あなたと同じ、第二の門を管理する人間が所有している、もう一つの水龍のペンダントです』

「もう一つ、ペンダント?」


『知らないんですか? 彼も水龍のペンダントを持っているんですよ』

「ゴーツリー、おじさん、持ってる、なんて、聞いたこと、ない」


『尋ね人が来るまで、壊された門をあなたと守護獣の水龍の半身でおぎなってましたね?』

「なんで、その事、知ってる!」

『彼も門の管理者だったから、門の扉が破壊されたとき、あなたの半身を使ってすぐに補修できたんです』

「おじさん、門の管理者、だった、から……」

『そうです』

「なんで、話して、くれ、なかった?」

『それは、本人に聞くしかないですね』


「なぜだ?」ロイが話に入る。「なぜ第二の門の管理者、キーマンが二人いるんだ?」

『その理由はお話しできません』

「どうして?」

『私が答える質問ではないからです。さあ、取りに行ってください』


「アニス」両手を握るバーネット。「気を付けてね」

『戻ってきてね』シュールも声を掛ける。

「アニス、頼んだよ」と言うロイに「大丈夫。絶対、戻ってくる」表情を引きしめ、左側の通路を向くと、ゆっくり歩きだす。

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