第386話 時の宮殿

 

 ロイの肩にとまるニゲラの案内で宮殿の奥へと進んでいく。


 時の宮殿は大理石でできており、今歩いている通路も石なので、中はヒンヤリしている。

 そして、壁に付いているランプが、冷たく感じる石と対照的に、暖かな空間を作っていた。


「なぜこの塔は「時の宮殿」と言うんだ?」ロイが聞くと『それは、これからわかります』ニゲラは前を向いたまま答える。


「もしかして、時間を超えられるとか言うんじゃないだろうな?」

「なぜそう思うんだ?」一番後ろを歩くマーティが聞いてくるので「この星は時空の狭間にあると言われてるだろう? 幻覚を見ることや、宮殿の名前から連想してそう思ったんだ。この宮殿は時空を超えることができるんじゃないかって。違ってるか?」


『察しがいいこと』


「じゃあ、下手したら過去に戻ってしまうこともあるの?」ロイとマーティの間でアニスと歩くバーネットに『そうですね、そういう事もありますよ』振り返って少し揶揄からかうように言うので「エーッ!」隣のアニスとくっつく。


 緊張感が漂う中、かなり奥まで行くと『ドアがたくさん出てきたね』今まで黙っていたシュールがボソッと呟く。

 両側に、ランプを挟んで重厚感のある年季ねんきの入ったドアが幾つも出てきた。


「ニゲラ。このドアの中はどうなってるんだ?」ロイが聞くと『別空間へ繋がってます』

「これ全部が!」

『はい。ですから、無闇に開けたりしないでください。迎えにいけない所に繋がってるドアもありますから』

「勝手に開いて、吸い込まれたりしないわよね?」顔が強張こわばるバーネット。

『それはありません』

「よかった」ホッと胸を撫で下ろす。


「それにしても、かなりでかい宮殿だな」後ろを振り返るマーティ。入ってから、かれこれ十分くらい歩いている。

『この宮殿に突き当たりはありません。あなたたちはもう、時空の中にいます』

「ここが時空の中なのか?」周りを見るロイ。両脇にはランプとドアが交互にあり、前後は真っ直ぐ伸びる通路があるだけ。

『心配いりません。案内役である私が一緒ですから、迷うことはありません』


 それから少しすると、通路が十字に交差しているところに出た。

 ニゲラは右角に立つ大きな女性像の肩に移動すると、説明を始める。


『これから一人ずつ、別々の方向へ行ってもらいます』

「なぜそんな事をするんだ?」見上げるロイに『皆さんに持ってきてもらいたい物があるからです。最初は第一の門のキーマンの方』

「俺だ」マーティが見上げると『あなたは右側の通路を進んでください。そして、持ってきてもらう物は、あなたの友人たちが身に着けている、あなたが腕にめている物と同じ種類のブレスレットです』

「何だと?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る