第385話 銀の鳥

 

「銀色のしゃべる鳥よ!」バーネットが指をさすと『何しに来たんですか?』再び聞いてくる。

「君は何者なんだ?」ロイが聞き返すと『私の質問に答えるほうが先です』


「僕たちは、この先にある、石造りの塔へ向かうところだ」

『何しに?』

「あの塔は……時の宮殿、だろう?」

『エッ! なんですって!』

「違うのか?」

『なぜ、あの塔の名前を知ってるんですか?』

「やっぱりそうか」


『質問に答えなさい』と言われ、どうしたものかと考えるが「僕たちは、文献の指示に従って、ここまで来た」

『文献?……そうですか。では、最初の鍵を持ってますか?』

「ああ」カバンから箱を取りだし、ふたを開けて中を見せると『あなたが尋ね人ですか?』と聞かれ「そうだ」と答えると、銀の鳥は近くの枝まで降りてきて、ロイが剣を身に着けているのを確認し、マーティたちを見ると『そうですか、わかりました』と頷く。


「今度は、君が僕の質問に答える番だぞ」

『それは、宮殿に着いてからお話します』そう言い残すと、塔のほうへ飛んでいく。

「あの塔が目的地なのは間違いないな」マーティに声を掛け、箱を閉じてカバンにしまうと「行こう」獣道を塔へ向かって歩きだす。


 道なりに進んでしばらくすると、目の前に小さな庭が現れた。

 正面には、狩りにいく格好をした石像の間に上下二段に分かれた石段があり、その奥に、宮殿内部への入り口が訪問者を待っていた。


 そして、階段下の右側の石像の肩に、先程の銀の鳥がとまっている。


 ロイたちが石段の前にいくと『ようこそ、尋ね人の方々』声を掛けてくるので「先程の質問に答えてくれるんだろう?」ロイが聞くと『質問の答えは、文献に載っています』

「そういえば、ここまで行けというところで終わってたな」カバンから文献を取りだして中を見ると、続きの文が現れていた。


 皆さん、お疲れ様でした。

 この星に着陸するときの第一の関門は大変だったと思います。

 ケガなどされていないでしょうか?


 では、これからの事について書き記します。

 今、あなたたちの前に、案内役の女性がいますね?

 ここからは彼女の指示に従い、時の宮殿内にある二枚目の鍵と、陽炎かげろうが住む水の宮殿内にある三枚目の鍵を手に入れなさい。


 ところで、無関係な人間が一人、同行していますね?

 その人間は宮殿内へ入ることができませんので、ここで待っててもらいなさい。

 その先の事は、無事にこの場所へ戻ってきてから指示します。


 文はここで終わっていた。


「君が案内役なのか?」

『ニゲラと言います。宜しく』

「二枚目の鍵のところまで、案内してくれるんだろう?」

『はい』


 ロイは振り向くと「すみませんイノンド。ここで待っててもらえますか?」

「……わかりました。私は招待されていないようですね。ここで、皆さんが出てくるのを待ってますよ」

 ロイはニゲラを見ると「ここは危険な場所じゃないんだろう?」

『大丈夫です』

「みなさん、十分気を付けて。必ず戻ってきてください!」ロイの手を握るので「はい。では行ってきます」手を握り返す。


 ロイたちはイノンドに見送られて石段を上がると、宮殿の中へ入っていく。

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