第383話 奇妙な森 ①

 

 コーヒーを飲み終えて落ち着くと「さて、そろそろ行こうか」ロイが声を掛ける。

「どこへ向かうんですか?」確認するイノンドに「森の中にある、確認されていない塔です」


「あそこですか。では、そこに探してる鍵があるんですか?」

「その塔が目的の場所だったら」

「そうですか。では行きましょう」


 支度を整えて偵察機から出ると「蒸し暑いんじゃないかと思ったが、結構涼しいな」上着を着るマーティ。

「さて、どうやって目的の塔を探すか、考えないとな」周囲を見回すロイ。


 深い森の中のわずかなスペースに着陸したため、周囲には背の高い奇妙な木がおおい茂っていて薄暗い。


「小高い丘でもあれば、遠くを見渡せるんですけどね」薄暗い森の奥を見るイノンド。

「とりあえず周りを見てきますから、ここで待っててください」ロイが一人で森の中へ入っていく。


 通りやすい場所を選んで進んでいくと、奥へは踏み込まず、少し入ったところで偵察機の周りを歩き、半周したところで何かを見付けたらしく、マーティがロイのところへ行くと何やら話しこみ、その後、ロイがさらに森の奥へ入っていく。


「ロイは何を見付けたのかしら?」

 バーネットがマーティのところへ行こうとすると「動かないでください!」イノンドが止める。「ここには、どんなものが存在してるかわかってないんですよ。ですから、無闇に動き回らず、ロイたちが声を掛けてくるまで、ここで大人しくしててください」

 強い口調で注意され、渋々戻ってくる。


 少しするとロイがまた何かを見付けたらしく、呼ばれたマーティがイノンドたちに手招きするので、アニスたちを連れて彼のところへ行くと、足元に一本の獣道が伸びていた。

 その道は森の奥へと続き、その先に、ロイが立ち止まってこちらを見ている。


「行くぞ」マーティが獣道けものみちを歩きだすので、アニスたちのあとから付いていくイノンドが「ロイは何を見付けたんですか?」と聞くと「俺にもわからん。ロイに聞いてくれ」


 その彼のところへ行くと、右側の少し上を指さす。

「あれは!」

 ロイが指さす先に、石造りの塔の天辺てっぺんが見える。


「あれが目的の塔ですか?」

「行ってみなければわかりませんが、たぶん間違いないと思います」

「この獣道はあの塔に向かって伸びてる。とりあえずこの道を進むか」マーティが道の先を見ると、ロイを先頭に塔へ向かって歩きだす。


「それにしても、こんな奇妙な森の中にあんな石造りの塔が建ってるとは、不釣合いもいいところだな」前を歩くロイに話し掛けると「密林の中に建つ石造りの塔とくれば、相当怪しいよ。でも、あれが目的の塔だとしたら、ずいぶんと近くに着陸したことになるな」

「運が良かったのか呼び寄せられたのか、どっちだろうな」

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