第二章 「第一の門 / 鏡の泉の門」

第13話 独立戦争 ①

 ファルネス系を出発してから一年が過ぎた。


 何も起こらなければ、大勢の観光客が、それぞれの想いを胸に押し寄せてきているはずだった。

 ファルネス系は、リゾートエリア内にある亜熱帯の十惑星からなる大型系星。

 年間を通して、観光客がバカンスを過ごすためにやってくる。

 しかし、今は殆どのものが石となって封鎖されてしまったため、あの活気は昔のものとなりつつあった。


「闇雲に探してて、本当に見付かるのか?」


 リビングでコーヒーを飲みながら、窓の外に見える真っ暗な宇宙空間を眺めていた。

 毎月一回の定期連絡。

立ち寄った星で変わったものを見付けては、父親のところへ届けている。

不安を抱えながら慣れない居住ステーションで暮らす政府関係者たちに、少しでも気休めになればと思って始めたことだ。


 それももう、今回で何回目になるだろう。


 最初のころは意気揚々としていたものの、いくら情報網を駆使くししても、影の森があると思われる星が一向に見付からないので、焦りと不安が大きくなってきていた。


「一体どの星にあるんだ? おい、意思があるんだったら教えてくれよ」


 お師匠様から預かった剣を身に着けた最初のころは、歩くとき、あちこちぶつけてヒヤヒヤしたが、今はすっかり馴染んでいる。


「情報が少ないんだから、道案内くらいしてくれよ」


 剣を見てため息を吐いたとき、腕時計の呼びだし音が鳴った。


“ロイ、SOSをキャッチしたんだ。すぐコントロール室へ来てよ”

 通信担当のエルからだった。

「すぐ行く」残りのコーヒーを飲んでリビングから出ると、通路を走る。


 コントロール室に入ると中央のメインシートへ行き、レーダー担当に「どこから発信されてるかわかるか?」と聞くと「前方の流星群からだ。今、スクリーンに出す」


 前方の巨大スクリーンに映しだされた流星群の一つに、壊れた小型機が見えた。


「こりゃあ戦闘でもあったみたいだな」とメインパイロットのセイボリー。広範囲に渡って攻撃を受けた跡が無数に残っているので「あの様子じゃ、パイロットが無事か判らないぞ」と渋い顔をする。


「エル。コンタクト取れたか?」

「今のところ応答なし」

「とにかく調べてみよう。手配してくれ」

「了解。偵察機スタンバイ願います。目標、前方流星群の小型機」

 スクリーンに映る偵察機が、流星群を避けながら壊れた小型機に近づいていく。


 しばらくして通信が入った。


“こちら偵察機。機内で男性一名発見。まだ息があります。負傷してるので、これから救出します”

「了解。医務局、生存者を一名発見したので、ハッチのところで待機しててください」エルがすぐに対応する。


 突然の来客に、艦内はどうして事故に遭ったのか、という話題で持ちきりになった。

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