第5話 予言者の修行場 ①
入園に政府の許可が必要な特別国定公園の奥地、切り立った三千メートル級の山々に囲まれたところに予言者の修行場がある。
ロイは公園のメインゲートから入ると
道なりにいくと深緑色の石柱の手前で車を停め、柱に刻まれているゴブリンのような生き物の額に手を当てると石柱が二つに割れて、さらに奥へ続く道が現れる。
月明かりでうっすらと浮かびあがる森の奥へ、しばらく進んでいくと古めかしい棟が見えはじめ、幾つかの棟を通り過ぎると、一際大きな棟の前で車を停める。
車から降りてその棟へ向かっていると、入り口のところに、グレーのマントを羽織ってフードをかぶった小柄な老婆が、こちらを向いて立っていた。
近づいていくと「お待ち致しておりましたよ、ロイ様」と声を掛けてきた。
「どうして僕の名を?」立ち止まると「私でございますよ」老婆がフードを取ると「お師匠様!」
「お久しぶりでございますね。お元気そうでなによりですよ」
「こちらこそご無沙汰しています。お会いするのは何年ぶりでしょうか。お師匠様もお元気そうでなによりです」
「ニネはちゃんとお勤めしておりますかね?」
「もちろんですよ。とても優秀だと父が褒めてますから、心配なさらないでください」
「そうですか。それは良かったですよ」シワクチャな笑顔を見せると「さあ、お入りくださいね」中へ招き入れる。
玄関を入った部屋は天井が高く、かなり広い。
「懐かしいな。この中に入るのは何年ぶりだろう」
床には古めかしい絵柄のカーペットが敷かれ、骨董品と呼べるくらいの調度品が壁際に置かれている。
部屋の奥には左右と奥へ続く石畳の廊下があり、お師匠様はまっすぐ奥へ歩いていく。
両脇の壁にはガラスのランプが点在し、異国に来たような雰囲気を醸(かも)しだしている。
(そういえば、この先に行くのは初めてだな)
見回しながら歩いていると、ふと妙なことに気が付いた。
音である。
自分の足音しか聞こえてこないのだ。
(お師匠様は、冷たい石の廊下を素足で歩いてるのか?)
長いグレーのマントを羽織っているので、足元が見えない。
ロイは部屋へ着くまでその事を考えていた。
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