大陸に伝わる女神

 パイプの煙を口に含み、濃い煙を吐き出す。


「ふー……っ。くくくっ。笑いが止まらんなぁ」


 王宮の寝室。

 巨漢が二人寝られるほど大きなベッドの上で、全裸のゲルードが煙を嗜み、口角をつり上げて笑っていた。


 ベッドの上には汗だくのリースが寝ており、行為が終わった後も息切れが続き、疲弊しきっていた。


「まさか。あの美しい騎士まで、我の物にできるとは……。親が裏切ってくれて良かった、良かった。はっはっは!」


 ゲルードはカイブ王国を占領してから、全てが上手くいっていた。

 自分に全てを一任されたこともあり、事実上、ウー大陸はゲルード将軍の領地となっている。


 酒池肉林を堪能し、性と酒、殺戮に支配。

 やりたい放題である。


 ゲルードは後ろを向くと、寝ているリースの尻を叩く。


「貴様らの進行する女神は、……何と言ったかなぁ?」


 ウー大陸は、女神信仰だ。


 宗教的な事情だが、シュートラントでは『男の神』が唯一無二の存在。

 女というのは、男の骨から出てきた、劣等種であると教えが広まっている。


 これに対して、女側が『無神論』を唱えたので、確執が生まれているわけだ。


 全ては生活基盤となっている宗教が根っこにあり、本来人を導くための教えは、皮肉なことに争いの火種となっていた。

 そして、魔族達の進行する女神は、『邪教』という扱い。


「麗しい戦乙女だったかな? ククク」

「う、……くっ」

「所詮、女は女。貴様らの信仰する女神が本当にいるのなら、見てみたいものだ。一生、我が奴隷として、何匹もの赤子を孕ませてくれるわ」


 もう一度、尻を叩き、リースの腰を持ち上げる。

 下腹部を押し当てると、リースが苦痛の声を漏らした。


(そういえば……。分隊長を殺した者が囚われたと報告があったな)


 ゲルードにとっては、最早どうでもいいこと。

 済んだのであれば、用はない。

 巨大監獄から逃げられた者は一人もいないのだ。


(まあ、いい。オリイルを家畜にした後で、可愛がってやるか)


 リースのうめき声が寝室にこだました。

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