責め苦返し
第三騎士隊が視察団として派遣され、三か月の月日が経った。
父オリゴが処刑され、娘のオリイルにまで嫌疑の目が向けられた。
調査の途中で同行を命じられ、オリイルと部下たちは長い間、問答を繰り返す時を過ごす。
ここで、目をつけたのが将軍ゲルードであった。
元々、オリイルが来た時から彼女を気にいっていた将軍は、「怪しい」と決めつけ、彼女を『ヘリス巨大監獄』に収容を決定した。
この決定に皇后は「止むを得ない」と判断を下し、近々別の者を派遣する事を伝える。
こうして、監獄に囚われの身となったオリイルは、尋問を受ける事となった。
いつだって、人間の世界は謀略で満ちている。
*
土間の空間は広く、部屋の端には火が焚かれており、煙は煙突を通じて外へ排気される。
壁には囚人を張り付けするための拘束具が、三つ。
間隔を空けて設けていた。
拘束具の前には、長いテーブルがある。
テーブルの上には、尋問に使う道具が一式置かれていた。
現在、尋問室には二人の女が拘束されている。
その内の一人であるオリイルは、裸の状態で両手を鎖に繋がれ、腕を高い位置で留められていた。
両足には同じく、枷がはめられている。
橙色の明かりに照らされた体は、大量の汗が反射して、瑞々しい肌は状況など関係なく、美しさを増していた。
「へっ。でけぇ乳下げやがって。将軍の命令がなけりゃ、気が済むまでブチ犯してたぜ。なあ、オリイル隊長」
「……くっ」
オリイルの表情が嫌悪感に歪む。
拷問官の言葉通り、オリイルの美貌は暗い穴に閉じこもった兵士や囚人達を魅了し、欲望を刺激していた。
目尻にある泣きボクロが、一段と周囲を魅了する。
染み一つない真っ白な肉体は、汗で濡れると、水気を含んだ餅のように、柔らかさが表面に出ていた。
騎士ということもあり、肉体は引き締まっており、クビレは細い。
なのに、胸部と臀部が大きく発達し、絶妙に
加えて、彼女は手の平に紋章がなかった。
手にない代わりに、乳房の片方、上部分に大きめの紋章が一つ。
尻の割れ目の上に、同じく大きめの紋章が刻まれていた。
部下からすれば、『悩める上司』といった雰囲気だ。
圧巻するほどの美貌をしたオリイルは、度重なる尋問に疲弊し、現在ではグッタリとしている。
半裸の男が下卑た笑みを浮かべ、大きな乳房を鷲掴みにする。
強く握られると、オリイルは腰を引いて、全身を大きく震わせた。
「薬の効果はバッチリだな。催淫薬はバカにできないだろ?」
脳の機能を狂わせ、与えられる刺激が倍になってしまう。
これは性的な刺激に限らず、痛みも同様に倍になってしまう。
さらに耳に入ってくる音は霞んで聞こえる。
涎は垂れっぱなしで、目は虚ろ。
男はオリイルの耳元で囁く。
「こいつはな。呪いを掛けてんだ。唾液を飲まないと、お前の意識は快楽の底に沈んで廃人だ。ククク。将軍の相手した後は、オレ達も頼むぜ」
オリイルは小刻みに体を震わせ、自分の呼吸に意識を移した。
男が張り切って妖艶な女の調教に臨もうと、股下に手を伸ばす。
そこで、いよいよ我慢できなくなったのか、隣を見た。
「なあ。うるせえよ! そいつ黙らせろ!」
隣では、別の女が尋問されていた。
分隊長を殺した罪で王都に送られ、近々将軍が顔を見にくる予定の女だった。
「はぁ、はぁ、く、うぅ、……い、ってぇ」
「ちょっと。男でしょ? 情けない」
紗枝である。
隣で快楽調教が行われていた中、紗枝は鉄の棒で体を殴られるなど、苛烈な責め苦を受けていた。
ところが、疲弊していたのは拷問官二人である。
「い、って。手首が、……うぐっ」
拷問官は手首を押さえ、うずくまる。
紗枝はオリイル同様に裸。
肌は赤らんでいるが、全く問題なし。
「なあ、お前。代われよ。い、ってんだよ」
「や、やだよ。さっき、オレやったもん」
体格の良い男二人であったが、紗枝を嬲れば嬲るほど、ダメージが自分の手首に返ってきて、深刻な負傷をしていた。
殴り続けた結果、手首が青紫に変色するなど、なぜか拷問官が苦しむ事となっている。後ろに立つ、もう一人は同じ苦痛を味わったので、もう嫌になっていた。
「どう、なってんだよ」
「力が弱いんでしょ」
「うるせぇ! 馬鹿にすんな!」
「あぁ、もう。ほんっと情けない」
紗枝に嘆息され、拷問官二人は顎をしゃくった。
目には涙が浮かび、鼻を啜っている。
「もう、いい。帰って」
「く、くそ」
「鍛錬の代わりになるかと思ったけど。すぐにへばっちゃうんだもん」
誰も紗枝を屈服させることができなかった。
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