女騎士レナ
英断
ウー大陸に船で来た一行は、分隊して視察をすることになった。
第三騎士隊ではなく、『視察団』として活動。
皇后の勅令を受け、調査をするというのが名目。
魔王の息子を確保する事。
大陸の現状について、生活様式、人々の待遇などを隈なく確認。
これが目的である。
常に女を犯す事しか能のない将軍ゲルードも、さすがに皇后陛下の勅令とあっては、視察団に対して無礼を働くわけにはいかない。
だが、瞳の奥底では、隊長のオリイルに目を付け、「どうにか物にできないか」などと考えていた。
視察団は、王都で顔を合わせてから八方に散り、それぞれ現地を調査する事になる。
だが、隊長のオリイルは一つ懸念していた事がある。
王都の城郭を出た辺りで、オリイルはレナに言った。
「お前は、南部を目指せ」
「南部?」
「南部にナユタの森がある。あそこは、魔王が用意した避難場所だ。そこにいなければ、他の避難場所に魔王の息子がいるかもしれない。南部から順に北上するんだ」
レナは見た目が、麗しい女だった。
背丈があるからこそ、人の倍は筋骨が大きい。
それでも、全体の均衡が取れていて、足は長く、女としての魅力が備わった美しい女騎士だ。
太陽の下に光り輝く金色の髪は、後ろで三つ編みに結び、さらにグルグルと巻いて上品に後ろで留めている。
青い目は透き通っていて、濁りがない。
肌は色白で、体中に細かい傷がありながら、汗を掻いた姿は同性さえ魅了するほどの美しさがある。
体に密着する黒いレオタードを着用し、上には青いワンピースと茶色の革のズボンを着ていた。
ワンピースは背丈が高すぎるため、丈が足りていない。
そのため、チュニックのように腰までしかなかった。
このように巨躯をしたレナは、集団行動より単独の方が向いていた。
「言った事、忘れていないな? ……地図に避難場所を記してある。目を通しておけ」
レナは単身で南部の砦に向かうことになった。
万が一、襲われたとしても、レナなら一人で乗り切れる。
なぜなら、常人では扱えない得物を振るえる力があるからだ。
背中に担いでいる大剣は、他の兵が使う得物のどれよりも大きい。
全長180cmの真っ黒な大剣。
グレートソードと呼ばれる、巨剣である。
刃幅は約50cm。
人間の胴体ほどあり、重さも相当あることから、落ちてくるだけで両断を約束される剣だった。
柄の部分には魔力封じの石をはめこみ、布を巻いて握りやすくしている。
隊長の指示に不満を漏らすことなく、レナは小さく頷く。
「はい。分かりました」
「レナ。……くれぐれも私が言った事を忘れるな」
「はい。隊長も気を付けて」
離れていく隊長の背中を見送り、レナは一人残される。
地図は持っているが、王都から南までは、途中まで馬車に乗る他なかった。
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