騎士の格言

 兵舎で新米の女の子に包帯を巻き、レナが言った。


「いい? あの子は指南役だけど、遠慮しちゃダメだよ」

「……ふぁい」

「女騎士の極意、忘れた?」


 小さな頭を撫で、レナが笑う。


「気に入らない者には拳を。陰湿な真似は厳禁。全てに拳で立ち向かう事」


 武闘派の格言である。

 ようするに、気に入らないと思ったら、口で主張するのではなく、主張しろと言う事だ。


 見た目はリスのように可愛い新米だが、教育が行き届いているらしい。

 すぐに理解し、胸の前で小さく拳を握りしめた。


「がんばりますっ」

「よろしい」


 頭を撫でると、「えへへ」と可愛らしく笑う。

 だが、考えてる事は、どうやって指南役を殴ろうか、という事だ。


 レナが残った包帯を片づけていると、入り口から声が掛かった。


「レナ! いる?」

「はい」


 返事をする。


「第三騎士隊に召集掛かってるから。すぐ広場に集まって」

「うす」


 ベッドから起き上がり、レナは広場へと歩いて行った。

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